ブクログ大賞フリー投票部門受賞作唯一のインディーズ作品は謎解き青春譚
公開日:2013/7/9
この小説は、第4回ブクログ大賞フリー投票部門受賞作で、唯一のインディーズ作品です。学校を舞台にしたミステリー風の青春物語で、米澤穂信氏の古典部シリーズのようなテイストの作品です。
物語の語り部は、プロローグとエピローグが男子高校生の城山口優斗(しろやまぐちゆうと)で、本編は女子高校生の藤元杏(ふじもとあんず)が担当します。本編は、月曜日から土曜日まで1日1章の、全6章という構成です。章のタイトルは、「Quarter Quasi-Lovers’(二十五セントの恋人ごっこ)」という藤元杏が好きなアーティストの楽曲名という位置づけになっており、作品全体をその音楽が流れているような雰囲気を醸し出しています。
藤元杏は城山口優斗を連れて「生徒会執行部」というちょっと変わった部活動への入部希望をし、そこで意見箱に入れられた「幽霊騒ぎ」についての投書の調査を依頼されます。本作は、その幽霊騒ぎの謎解きを通じて、だんだん2人の距離が縮んでいくプロセスを描いています。作中の表現を借りれば、「お祭りで食べるりんご飴のような、甘味でコーディングされてはいるけど中心部はちょっと酸っぱい、楽しいけど悲しいような、不思議な気分にさせてくれるそんな」小説です。2人の軽妙な会話がいいリズムになっていて、読後感はとても爽やかでした。
最初に読んだ時には気付かなかったのですが、謎解きがストーリーの軸になっているだけあって、読み返してみたら実はあちこちに伏線が張られています。作中だけでははっきりとわからないこともあるのですが、シリーズになっているので後の作品で明かされる部分もあるのでしょうね。ぜひ他の作品も読んでみたいと思いました。
「馬がいる」けど「鹿はいない」
Quarter Quasi-Lovers’(QQL)の音楽性をお菓子に例えている
杏が優斗(ポチ)を連れて入部するのは生徒会執行部
幽霊騒ぎの調査を依頼される
調査中、杏と優斗も幽霊を目撃してしまう
V・S・ラマチャンドランの「脳のなかの幽霊」を参照あれ