美少年を取り巻く連続殺人事件発生。アッと驚くそのトリック!

小説・エッセイ

更新日:2013/7/22

神様が殺してくれる

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:森博嗣 価格:1,469円

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推理小説ほど書くのも読むのも難しいジャンルはないのでは、とつくづく思います。このジャンルに精通すればするほど、簡単なトリックでは物足りなくなるし、詰めが甘い作品では1ページ目からすでに犯人の匂いがしてしまったりして感情移入がしにくく、満足度が得づらいもの。ですが、この作品は好感度大でした。

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なんといっても、最重要容疑者リオン·シャレットが美少年(!)。そんじょそこらの美少年ではありません。息を飲むほどの、女性か男性かも見紛うほどの神秘的な魅力。主人公のレナルド·アンポールはこの美少年と学生時代、ルームメイトでした。その美しさのあまりに親しくなりきれずに終わる友情。そんな2人を再び結びつけたのは、女優イザベル·モロントンの殺人現場にリオンが手首を縛られて発見され、「レナルドが殺した」と証言したから。

証拠が出ず、誰が犯人とも断定できないまま、次の殺人事件が起こり、その現場にもまたリオンが。今度の被害者はイタリア人著名作曲家。リオンは殺された彼のベッドで意識を失っているところを発見されます。そうしてリオンをとりまく男女たちが次々と殺されてゆく。リオンが男娼なら、殺人犯人の動機は痴情や怨恨か。誰もが注目せずにはいられないリオンの的を得ない証言は嘘なのか、それとも狂言なのか。インターポールで事務職を勤める主人公が、段々と事件の真相に迫ってゆき、そして彼自身もリオンの虜になってゆく……。

そして舞台は、フランス、イタリア、台湾、日本と世界を股にかけるわけですから、面白くないわけがなく。日本人作家が描く海外舞台や外国人主人公にありがちなぎこちなさや、演出しすぎのきらいもありません。とてもナチュラルに、翻訳小説かなと思わせるほどの自然な状況設定も見事です。さて。犯人は誰なのでしょう? うーん、やっぱりそう来たか! と想像できた方は相当に推理小説好きかも。真夏の夜の読書がちょっと涼しくなる、そんな1冊です。おすすめします。


ベルギーの資産家の養子がパリの大学に現れる美少年という設定からしてワクワク

リオンの証言で最重要容疑者になってしまうレナルド。現場で見つかったDNAもとうとう一致してしまう

レナルドの婚約者ミシェルも、彼の異変に気がつき始める
(C)幻冬舎/森博嗣