猛暑の8月、なのにおでんが食べたくなる、そのワケとは!?

更新日:2013/8/2

コンビニでは、なぜ8月におでんを売り始めたのか

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 扶桑社
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:BookLive!
著者名:石川勝敏 価格:462円

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人間、自分が思いもよらなかった観点の情報に出合うと「おおっ!」と驚くものですが、私もこの本を読んでまさに「なるほど、そうだったのか!」と、目からウロコがゴソリと落ちました。

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何気なく入ったコンビニで「なぜ暑いはずの8月におでんを買ってしまうのか」、「どうして寒い2月に冷やし中華を買いたくなってしまうのか」。この、一見誰にもありそうで、しかしまともに向き合って考えたこともなかった消費行動のナゾ。実は「お盆をすぎたらおでんを売れ!」というのは、コンビニ業界では常識なのだとか。えっ、その理由はこれいかに?

素朴な疑問に、日本生気象学会(気象が人々の生活にどのような影響を及ぼすかを、科学的に調べる学問)の会員であり、ウェザーマーチャンダイジング(気象情報を通じて顧客のニーズを予測、商品展開する)に精通する著者は、実に明快かつロジカルに答えてくれます。

おでんは寒さを体感したときに売り上げが伸びる食べもの→東京では1年のうち8月上旬に気温上昇のピークが来て、その後翌年1月まで徐々に気温は下降する→体感的には、昨日よりも今日のほうが涼しく(寒く)感じる日が増えてくる→ゆえに、たとえ夏でも「おでん、食べようかな」と、体が欲してくるのだとか! かたや2月の冷やし中華のナゾは逆に、2月下旬を境に気温は徐々に上昇、体が「夏モード」へと変化してゆくことが関係しているとのことでした。

季節外れの消費行動が、単なる個人の気まぐれ買いではないことが、売り上げデータと気候の関連分析から明確になったのです。多くの人が、天気や気温の変化に影響を受けながら、コンビニで商品を選んでいた。それは極めて本能的な行動であり、そんな私たちの無意識のニーズをキャッチして、商品展開がなされていたとは、まったく気づきませんでした。

本書はおでんと冷やし中華のナゾから始まって、気温が上昇する時期に売れる「昇温商品」と下がっていく時期に売れる「降温商品」と購買行動、人の「慣れと飽き」に対策する商品展開、おいしさを感じる7覚(甘味、酸味 、塩味、苦味、うま味+圧覚、温度覚)が昇温期と降温期にどう変化するのかなど、ほかにも興味深い分析や事例がたくさん掲載されています。

エアコンディションされた環境を好む私たちですが、時代は移れど人の体の根本に変わりはない。自分が今、何を欲しているのか、本能の声に耳を澄ませつつ、天気や気温と自分の体の声を意識してみませんか?


第5章「熱中症に気をつけろ!」では、気温は高くても低くても生体機能に負荷がかかってくるものと、石川さん

ファッションにおいて、最もおしゃれを満喫できる気温帯は、統計上では15度から25度。ちなみに胸元を開けても快適な皮膚温度を保てるのは、15度を超えたあたりからだとか!

核家族化、個食化の時代において、古き良き日本を思わせるおでんが、コンビニで人気をキープしていることのすごさ。改めていろいろなことを考えさせてくれる本です
(C)石川勝敏/扶桑社