俺の物語を聞けぇー! な、硬派な吸血鬼譚

公開日:2013/8/23

ストライク・ザ・ブラッド 1

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
ジャンル:コミック 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:TATE 価格:599円

※最新の価格はストアでご確認ください。

吸血鬼のお話です。それも電撃ゲーム小説大賞とか、日本SF新人賞とか、スニーカー大賞とか。どれも難関なのにまとめて獲っちゃった、あの三雲岳斗さんの。当然、無難な作品であるはずはなく、舞台が人工島だったり、ヒロインが獅子王機関とかいう組織で育った剣巫だったり、クラスメイトがバイトで島の中枢の保守をするようなプログラマーだったり。とにかく、設定をいちいち説明していたら、それだけで本になるのでは? という具合なんですよ。

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しかも今回レビューするのは、そのコミック版です。絵ですから。アクションには強いけど、さりげなく世界を説明するのって難しいと思うんですよね。実際、第1巻は物語の準備に追われている感じはややします。けれど後半、いわゆる『引き』の部分で話は加速して、アクション満載の第2巻へと続くのはうまい配分です。最初は「もう少しキャラを丁寧に説明してあげればいいのに」とか思いましたが、さすが専門家ですね。

冒頭、1コマ目は文字だけ。それも「第四真祖」としかありません。そしてヒロイン雪菜さんの「私は第四真祖の監視役なのよ!」という宣言が続きます。懇切丁寧で、頭をまったく使わなくても読める話になれていると、少々面食らいます。しかし「後は実戦でな」ではないですが、雑魚敵との戦いなどで交わされるやりとりを追っていくうちに、主人公古城くんは最強の吸血鬼、第四真祖。雪菜さんは人間だけど魔族と戦う攻魔師。そして古城くんに関心ありありなクラスメイトの浅葱さんの存在などがしみこんできます。

おのおのの立ち位置さえわかれば、あとは物語の波に乗るだけです。古城くんとは倫理的に相容れない敵も出現し、すごいバトルになっていくんだろうなという雰囲気がたまりません。

あまり優しい話ではありません。パンチラがあっても、おいしいハプニングがあっても、ドキドキしたりしません。読み手としては「そんなことより、さっさと逃げろー!」という感じです。ハーレム漫画で、「くそぅ、主人公うらやましいぜ」っていうのもいいですけど、たまには「古城、うしろー!」ってハラハラするのも楽しいと思いますよ。


これが冒頭ページ。雰囲気を味わえれば、それでいいのかな

古城くんが気になる、天才プログラマー少女の浅葱さんです

最強の吸血鬼なんだけど、吸血鬼としては新米さんなんですね

コミックならではの迫力あるバトルシーン