失敗は成功のもと? 南場智子がDeNAを成功に導いた秘訣とは?

公開日:2013/9/5

不格好経営 ― チームDeNAの挑戦

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 日本経済新聞出版社
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:南場智子 価格:1,337円

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当事者とアドバイザーの間には大きな乖離がある。はたから見ていれば良いアドバイスができても、自分の身となれば上手に動けない。DeNAの創設者・南場智子の書『不格好経営』には、そんな苦労がありありと描き出されている。

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たった数年でDeNAを東証一部上場の超大企業に育てた南場智子は、世界有数のコンサルティング企業マッキンゼー出身。マッキンゼー時代はパートナー(役員)も務めたというんだから、「そりゃあ経営アドバイスのプロが作ったDeNAは成功して当然だろ、何が不格好だ」とやっかみたくなる。だが、良いアドバイスができるからといって、本人が優れた事業を起こせるとは限らない。経営する身となって初めて分かることがある。本書に描かれているのは、彼女の失敗の数々。彼女の生い立ちからマッキンゼー時代のこと、DeNA創設秘話やプライベートに至るまで、赤裸裸に語っている。彼女の失敗から浮かび上がってくるのは、経営者として必要な能力が何かということ、そして、DeNAの成功の理由だ。

南場は仕事を進めていく中で、コンサルタントと経営者の立場の違いを強く痛感したようだ。「事業リーダーにとって、“正しい選択肢を選ぶ”ことは当然重要だが、それと同等以上に“選んだ選択肢を正しくする”ということが重要となる。決めるときも、実行するときも、リーダーに最も求められるのは胆力ではないだろうか」と彼女は語る。「この案にすべき」というコンサルタントとしての発言と、「この案にします」という経営者の意思決定は別次元。経営者の決断にはどれも勇気がいることだが、選んだらおしまいではない。選択が失敗とならないように懸命に努めねばならない。コンサルタントとしての経験が邪魔になり、経営判断が遅れてはならないと、南場は、「unlearning(学習消去)」することを心がけたという。

創業時の失態や資金集めの苦労、成長過程での七転八倒…。なかなか上手くいかない経営の中でも彼女が寝食を忘れ、仕事に没頭出来たのはやはり仲間の存在が大きいのだろう。マッキンゼー時代の仲間で共に起業した川田尚悟と渡辺雅之、モバゲーを開発した川崎修平、現DeNA社長・守安功など、彼女の周りには非常に優秀かつ個性的な人たちが集まっている。彼らの支えなくしてDeNAはここまで大きくならなかった。経営者は優秀な人材を集めなくてはならない。そして、彼らに仕事を任せることが必要だと彼女は言う。相手のことを信じて、仕事を渡し、責任は自分が全部負う。DeNAではこの方針から20代の若手に韓国進出戦略に任せたというのだから驚きだ。失敗は成功のジャンプ台と捉えて果敢に何にでも取り組んでいくからこそ、社員は実力がどんどんついていくのだろう。スピード感あふれる人材育成の現場が本書から垣間見ることができる。

また、DeNAがここまで多くの人に広まっていった秘訣も伺える。その一つはターゲットへの訴求の上手さだ。インターネットオークションサイト・ビッダーズの広告を事もあろうかライバルであるヤフオクに掲載してもらったこと、モバゲーのオープン時には既にオープンしていたモバイルオークション・モバオクのユーザーの中でほかの

ユーザーとのやりとりが特に激しい「お話好き」1000人をまず招待し、SNS機能の活性化と口コミ効果を狙ったという戦術は面白い。

失敗も数多くあるが、失敗がなければ成功は生み出せなかった。失敗を乗り越えてこそ、人も企業も成長して強くなる。起業を目指す者なら南場智子の軌跡を知らずにはいられないだろう。


コンサルと経営は別物

失敗は成功のもと!

すばやい判断が経営責任者には求められるのだという。特に変化の早いIT業界ではスピード感が大切

夫がガン宣告に、ブライベートをとるか仕事をとるか…。南場さんの半生がドラマチックに描かれている