ガスなし電気なし水道なしライフライン全部なし、0から始めるスローライフ!

更新日:2013/9/25

新白河原人 〈遊んで暮らす究極DIY生活〉

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:守村大 価格:756円

※最新の価格はストアでご確認ください。

日本は高度経済成長以降、大量生産・大量消費のライフスタイルが主流になりました。なんでもかんでも使い捨て、そんなあまりにもめまぐるしく変わり続ける社会に対して2001年頃から提唱されたのが「スローライフ」という生活です。明確な定義はありませんが、おおよそ地産地消の農業や田舎暮らし、というものにあたります。

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さて、本作『新白河原人 遊んで暮らす究極DIY生活』は、そんなスローライフの魅力と苦労話が四方山詰まったエッセイ集。下草を切り、道を作り、丸太小屋を建て、サウナを建て、風呂を作り…と、本当に何もないところから始まる開墾生活記は、読んでいて手に汗握ること間違いなしの魅力に溢れています。

さて、本作の著者であり開墾者である守村大(もりむら しん)は週刊漫画雑誌『モーニング』で漫画を連載していた漫画家です。そんな彼が「東京ドーム1つ分の荒れた里山を買って開拓生活を送る」決心をしたのは、ある日風呂場で自分の姿を見た時でした。「フト気づいたら風呂場の鏡の中に、疲れて消耗し、脂ぎって肥え太ったオッサンがいた」「このまま消費経済に飼い慣らされたブタになってくたばるのヤダなって思った」…そこから、よし里山買って自給自足しよう、と実行してしまえるところが余人には真似できないところ。

放置された雑木林は里山ジャングルと化しており、そんな山を前にして『はじめ人間ギャートルズ』の歌を口ずさみ胸を高鳴らせる、というプロローグは未来への楽しみに溢れており、読んでいるだけでこれからどんなことが起きるのかとワクワクしてしまいます。

そして始まる開墾生活は、開始早々「スローライフ」という言葉からは想像できない苦労の連続です。まず購入した里山は30年ほど人の手が入っておらず荒れ放題で、とにかく下草がすごい。エンジン刈り払い機を構え、気ままに繁茂した竹・ツル・潅木・下草が刈っても刈っても終わらない! そして苦労して山に深入りすると、なんと四方八方が同じ景色で現在地が不明、自分の家(山)で1時間以上遭難しました、というエピソードから始まるのです。

この後の蜂の巣事件や伐採危機一髪や伐木ドミノなどなどなど、まさに「血と汗涙の」という形容詞がここまで似合う苦労話はそうそうないでしょう。こうして四苦八苦する開墾素人の漫画家が、いかにして丸太小屋を作るまでに至るのか。それはぜひとも本書を購入してご覧下さい。


山を背景に堂々と建てられている丸太小屋とサウナ小屋。これが建つまでにはたくさんの苦労があったのです…

30年間人の手が入らなかった里山の様子。本当に日本なのかと疑いたくなるレベルで想像以上にジャングルでした

どこもかしこも見渡す限りの雑木林! そりゃ迷子にもなりますよね

蜂に怯えながら下草刈を続けること5ヶ月…5ヶ月!? 荒れた里山の下草刈がどれだけ大変なのかがよくわかります