自分を殺さず生きる人のもとに運は集まってくる

小説・エッセイ

公開日:2013/9/29

運は「バカ」にこそ味方する

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ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:桜井章一 価格:486円

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頭のよい人には2種類ある。

ひとつは記憶力のいい人。見たり読んだりしたことをどんどん記憶してしまう。日本史や世界史が得意で、年号や出来事を端から覚えることができる。わたしはこれが苦手だったので、大学入試で第3の科目に倫理社会を選んだ。倫理社会は思想史のようなものだから年号を記憶する必要はないしエピソードを頭に入れればよいのでたいそう楽だったのだ。

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それはさておき、頭のよい人の2つめは情報の処理能力が優れた人。会話をしていてこちらの話の本質をすぐとらえ、的確な答えを返してくるなどはこの手の人である。あんまり頭がよすぎて、会話のふたつくらい先を読んで返答をする人なんかがいて、なんだか分からなくて、効率的なのか不便なのか判断できない場合などもある。

いずれにしろ、そうした頭のいい人が世の中のシステムを、自分たちの都合のいいように組み立て建てているのが今の社会だ、とこの本の著者はいう。そうして私たちのようなさほど頭のよろしからぬ人間は、窮屈を我慢して、そのシステムに自分を押し込んで生活しなければならない仕組みになっている。そうしなければ、「役に立たない」とか「バカ」と呼ばれてしまうのだ。

「バカ」でいいではないか、というのが著者の主張だ。自分を殺して型にはめ込むより、自分のペースで生きている人の方が「気持ちがいい」。「気持ちがいい人」のまわりに人は集まってくるし、運も呼び寄せられる。

主張はもっとある。深く考え込まず、無意識に頼って行動しなさい。考える力でなく、感じる力を大切にしなさい。直感で動けってことだろう。正しい決定を得る道はこれである。

あたっていると思うのだ、基本的には。ただこの生き方を選ぶと、諦めなければいけないものが出てくる。ひとつは富。企業の中で経済的な余裕を度外視するとなると、まわりから浮き、非常に特殊な場に立たされることになるだろう。著者は企業内自由人の豊かさを「釣りバカ日誌」の登場人物にたとえるのだが、わたしには脳天気にすぎると感じられた。

もちろん、学ぶべき内容もある。組織の中で自分を大切に生きること。社会的弱者への思いやりを忘れない、下への視線を身につけること。などなどだ。自分を改革するヒントを得る入り口として読む1冊だろう。