セクスィー王子の武器は当然、美と愛!

ライトノベル

公開日:2013/9/28

ガガガ文庫 王子降臨(イラスト完全版)

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 小学館
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:手代木正太郎 価格:648円

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自由だとか、型を気にしないというのがライトノベルの売りですが、個人的にはライトノベルほど形式美を重視する小説もないのでは? と感じることが多い中、ここまで自由奔放なライトノベルは久しぶりに読んだ。

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まず文章。神視点で、敵味方関係なくあっちこっちに飛びまくるのだが、ぐいぐいと読者を惹きつける勢いがある。荒唐無稽なことを書いているのに、なぜか「うん、そうかな」と納得させられてしまう力がある。また『のぼうの城』を読んだときのように、無茶苦茶なんだけど、不思議とその情景が目に浮かぶ。作者が創った話を追っているのではなくて、まさに頭の中に降臨した物語を書き出した話のように感じた。

話は、戦国時代の日本をモチーフにした世界に、とにかく美しすぎる“王子”が“姫”を探しにやってくるというところから始まる。降り立ったのは鬼のような領主が治める国。ほとんど『北斗の拳』状態の領民は、楽に死ねればいい、という程追い詰められている。しかし王子が涙すれば枯れていた泉が湧き、ふれれば病気が治り、やがて王子は彼らの光となって、凶悪な領主と対決するような構図になる。しかし闘いといっても、殺陣ではない。美しさ故に矢すら当たらないのだ。

NHKで放送されていた『サラリーマンNEO』というコント番組をご存じだろうか? あの番組の中で沢村一樹が演じていた“セクスィー部長”がセクスィーの力でなんでも解決してしまうのに、ちょっと似ている。ようするに一歩間違うとお笑いなのだけど、本作はあとがきまで徹底して勢いを殺さない。「これは本当の話なんだよ!」「俺、調べたんだって!!」というスタンスで書き切った快作。


資料より抜粋と書き切っちゃうんですよね。とことん傾いてます

王子の一挙一動がとにかく美しいのだ!と熱く描写されます

そして王子が追ってきた姫は、領主にとらわれているという書き出し

物語の中盤を引っ張る蛾彩さんの殺陣