主演は亀梨和也、いよいよドラマがスタート! あの家族の過去がわかるシリーズ番外編

小説・エッセイ

公開日:2013/10/8

フロム・ミー・トゥ・ユー ― 東京バンドワゴン

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 集英社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:小路幸也 価格:1,234円

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昨年4月に、このコーナーで『東京バンドワゴン』のシリーズ1冊目をレビューしたとき、「懐かしき昭和のホームドラマのような味わい」と書いた。それもそのはず、そもそもこのシリーズには著者のこんな献辞がついている。「あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ」──つまりもともとあの時代のホームドラマへのオマージュだったのだ。そしてその気持ちは伝わった。ホントにドラマになっちゃった。10月12日スタート。亀梨和也主演で、毎週土曜日夜9時。亀梨クンが演じるのは堀田家の次男(ただし出生の秘密あり)で、モテモテのイケメンという堀田青だ。

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「東京バンドワゴン」は東京下町の古本屋だ。屋号として書く場合は、京の字の中が口ではなく日になる。シリーズ開始当初は四世代8人+幽霊ひとりが暮らしていた。店主の勘一、80歳。息子で伝説のロッカー・我南人(がなと)、還暦。さらにその子の藍子、紺、青の三姉弟。紺には妻の亜美と娘の研人がいる。藍子にも娘の花陽がいる。そして勘一の妻で、76歳でこの世を去ったサチが幽霊となって皆を見守っている。物語はこれまでずっと、このサチの視点で語られてきた。

が、しかし。「シリーズ開始当初は」と書いたのには意味があって、それからどんどん増えていくのである。どの巻にも登場人物の相関図が書かれているのでぜひご覧いただきたいが、巻を追うごとに相関図がエラいことになっていく。人物が増え、関係を示す線が増え、伸び、重なり、混じって、もうワケがわからない。なのに読んでいくと、すんなり全員が頭に入ってくるのである。ほら、家族や親戚、ご近所さんって、たくさんいてもちゃんと誰が誰だかわかるでしょ。そんな感じ。

でも今回はちょっと違う。この『フロム・ミー・トゥ・ユー』は番外編なのだ。これまでずっと語り手を務めてきてたサチおばあちゃんにはちょっとお休みいただいて、堀田家の面々や近所の人など、ひとりひとりが語り手になる。これは実はすごいこと。だってこれまでサチさん視点だったからわからなかった登場人物の「心の中」が、初めて直接語られるんだから。

出生の秘密を知った頃の青のこと、青とすずみの出会い、父親のことで悩む花陽に真奈美(近所の居酒屋のおかみさん)が伝えたある出来事、コウさん(真奈美の店で働く板前)が真奈美のことをどう見ていたか、紺と亜美の出会い、我南人と秋実の出会い……サチが語り手では描けない、それぞれのドラマが初めて明かされる。個人的に膝を打ったのは、我南人の喋り方の由来だ。そうだよなあ、もう1冊の番外編『マイ・ブルー・ヘヴン』を読んだとき「あれ?」と思ったんだよなあ。うーん、これはファンにはたまらない。

 ご注意いただきたいのは、これは「このシリーズをずっと読んできている読者向け」だということ。これまでのエピソードを知っていればいるほどニヤニヤできるし、前提を知らないと意味がよく分からない話もあるかもしれない。しかし──敢えて本書から手に取ってみる、というのもアリかも。もしかしたら本書だけではピンと来ない部分があっても、あとで他の巻を読めば「あのとき出てきたあの話は、これのことか!」と腑に落ちる快感が大きいはずだ。さて、あなたはどっちから読む? それともドラマが先?


いつもの1冊4話のパターンを崩し、今回は短めの話がたくさん

相関図。番外編なので、話に合わせて隠されてる部分も多く、今回はけっこうシンプル。(これでシンプルなんです!)

あの時代のドラマへの思いが、この一言に