能年玲奈はどう演じる? 揺らぐ思春期。傷つき、傷つけあいながら進む少年少女を描く傑作!
公開日:2013/10/28
時の運行と命の流れは、今のところは不可逆であります。科学万能の時代ですから、将来的にはそうでなくなってしまうかもしれませんが、今のところはそうなっていません。つまり、どうがんばっても、我々は前に進んでいってしまうんですね。後ろ向きだか、前向きだか、横向きだか、あるいは寝そべっていても、ズンズンと進んでいくわけであります。
だからこそ、自分の安定・安心を求めたりするのかもしれません。吊り橋のような一本道を、自分がグラグラと不安定なまま前へ押しやられるのは、とっても恐ろしいことですから…。
―――そして思春期ともなれば、それはより一層のこと。大人が日々感じる以上の恐怖を感じているに違いないのです。(不思議なことに、年齢を重ねるとそれは全くキレイサッパリに忘れてしまうのですが…)本作は、そういった少年少女の揺らぎと恐怖を捉えた傑作であります。
宮市和希(みやいちかずき)14歳。春山洋志(はるやまひろし)16歳。不良という自由な生き方に憧れる和希と、無鉄砲で簡単に命をも放り出すような春山は、多くの悩みと葛藤、恐怖がごちゃまぜになったまま、暴走族へと身を投じます。
誰かに身を寄せ合うほどに、自身の針で相手を傷つけてしまうという“ヤマアラシのジレンマ”を抱えた二人。傷つけ傷つき合いながら、少しずつ前に、前に…。親との関係に悩み、社会との関係に悩み、とめられない自分に悩む。グラグラと揺れ続ける心は次第に共振していくのです。危なっかしくて、何が起きても不思議ではない状況には、終始ハラハラさせられます。
そして、紆余曲折を経て、少年と少女は大人になっていきます。傷つけ合ったヤマアラシは自分のハリの長さに気づき、丁度良い距離を学ぶのです。
思春期。
たったひとことで表すには、あまりにも多感な時期。連載していた80年代当時に、絶大な人気を博したのも納得です。
2014年には能年玲奈さん主演で映画化も決まっている本作。色褪せない名作を、ぜひこの機会にご賞味あれ!
冒頭のモノローグ。ゆらゆらとした水彩画が、和希の心のよう
母親と和希。父と離れてからの溝は深い
家を抜けだした先で、春山と出会う和希
乱暴で、素直じゃない2人の未来はどうなるやら…
(C)紡木たく/集英社