人間はどうやって大人になるのだろう? 子供と大人の育てて育てられ二人三脚物語

更新日:2013/11/8

ママゴト 1

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / エンターブレイン
ジャンル:コミック 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:松田洋子 価格:450円

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貧乏や泥沼を書かせたら天下一品。その評価に違わぬ、大変泥臭い「子育て」漫画でした。ほのぼのとした日常モノを求めて手を出すと、鋭いボディを喰らった気持ちになるかもしれません。作者の松田洋子さんは『薫の秘話』で第27回ちばてつや大賞(一般部門)を取り、その諧謔味あるギャグで一気にファンを掴んだお方です。その根強い人気たるや、『薫の秘話』が3度も再刊されるほど! 『赤い文化住宅の初子』は映画化もされており、今作の『ママゴト』では日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。安定した実力で、えぐり出すように描かれる人間の汚さ、残酷さ、身勝手さ、その中で光る優しさと慈しみの輝き! 一度読んだらクセになること間違いなしです。

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主人公の恩地映子(おんちえいこ)はアラフォーのスナックのママ。20年前の風俗嬢時代、生まれたばかりの子供を亡くしたのが深いトラウマに。以来「自分には子供を持つ資格はない」と子供に近づくことも、目を合わせることすらできないまま生きてきました。

そんな彼女がひょんなことから、風俗嬢時代の親友の息子、大滋(たいじ)を半ば無理やり預けられることに。はじめは映子もそれはもう嫌がり、つい苛立ちのままに怒鳴りつけてしまったりしてしまいます。けれど真っ直ぐで明るい大滋を追い出すことはどうしてもできません。彼が一人静かに風呂に入っていると溺れていないかとそわそわしたり、指をたくさん切りながら料理にチャレンジしたりと、今まで逃げ続けていた過去に少しずつ向き合うようになって…

本作の見所は、なんといっても大滋によって少しずつ癒されていく映子の様子です。「行ってらっしゃい」「行ってきます」の些細なやりとりで仕事にやる気が出たり、一緒に「いただきます」と言ってご飯を食べると自然と笑ってしまったり。消えない傷を抱えながらも少しずつ立ち直ろうとして、大滋を慈しもうとする姿には胸を打たれてしまいます。子供を育て、子供に育てられて。二人三脚で少しずつ成長していく大人と子供を描いた『ママゴト』、ぜひ読んでみてください。


「ボクな 寝る前に歯ぁみがくんよ」「大人の歯になるとみがかんでも平気やねん」つぶらな瞳に見つめられると弱い映子は、結局一緒に歯磨き。なんだかんだで子供が好きな様子が見て取れます

朝おきたらいなくなっていた大滋を探して東奔西走。子供を失ったことがどれだけ根深く映子のトラウマになったのかがよくわかります

「いってらっしゃい」「いってきます」こんな些細な会話のひとつでやる気が出てしまう映子が微笑ましい