悪夢のような父親と、老成した息子のドタバタシュールギャグ

更新日:2013/11/11

秋津 1

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : KADOKAWA / エンターブレイン
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:室井大資 価格:463円

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笑いました。大変笑わせていただきました。シュールな日常家族コメディの中できっとてっぺんを狙える面白さ。出てくるキャラが妙に現実味のある変わり者な方々で、たいへん私好みでした。特に奇人変人漫画家駄目親父の秋津と、その息子いらかのやり取りが絶妙です。秋津のむちゃくちゃな言動に振り回される周囲の苦労には、頑張れと応援しつつ苦笑しつつ、最後にはつい思い切り笑ってしまいましたゴメンナサイ。特に一番近くで一番被害を受けるいらか君。強く生きてください(笑)

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タイトルにもなっている主人公の秋津はとにかくめんどくさい男です。小学生の息子を全身全霊でおちょくるのが生きがいで、スランプに陥った友人をからかい倒すのが趣味で、ネームが極限まで出来上がらないという困難から全力で現実逃避する駄目の見本のような人。

そんな彼の息子であるいらか君は、秋津のモンスターぶりに鍛えられ、大変良識のある冷静な子に育っています。秋津のアシスタントさんにご飯を作ったり、秋津がスランプに陥った友人に「自分とばかり話すぎなんだよ!」と言い放った時に至極冷静に「あなたは少し自分と話してほしい……」と心中でぼやいてみたりと、小学生らしからぬ老成ぶり。そして心底めんどうくさいと思いながらも、ちゃんと秋津の相手をしているあたりからいらか君の人の良さがにじみ出ていています。

そして秋津第2の被害者、担当の村瀬さん。秋津曰く「潰瘍みっつ、ぜんそく群発性頭痛、自律神経失調症、高血圧高血糖、わんこそばの要領で太田胃散を流し込む男」だそうで。だいたいその原因である秋津を叱り飛ばしつつ、胃を痛めつつ、毎度救急車のお世話になりかける苦労人です。吐血もします。ここまで苦労しておいて、それでもやっぱり五年間秋津を見捨てない村瀬さんは菩薩かと思いました。

秋津が全力で周囲を振り回し、それにしっかり付き合う周りのお人よし達。という形がシュールとほのぼのとした感じの混ざった独特の味を出しています。一度読めばハマる人はとことんハマる、謎の魅力に溢れている不思議な作品でした。心機一転のお供にぜひご一読あれ。


「参観日に父親がボクを殺しに来る……」「社会的に」そして参観日当日、いらか君は決して振り向きません。振り向けと念を送る秋津といらか君の(本人たちはとても大真面目な)真剣勝負!

母親が出て行ってから笑わなくなったいらかを少しでも笑わせたかった、という秋津のつぶやきで完全にほだされているいらか君の図。待っていらか君、振り向くんだ! 君の父親内心で「クケケケケ」とか笑ってるぞ!

秋津の締切破りぶりに担当編集としての自信を無くす村瀬さん。「自信を持ってくれ! 何故そんなことを言うんだ!?」「では描いて!」「オレに出来ることならなんでも力になるからさ!」「描いて!」最後のコマの村瀬さんの心境が切実です(笑)
(C)室井大資/KADOKAWA/エンターブレイン