フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~

更新日:2013/11/11

フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 1【電子版書き下ろし付】

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / メディアファクトリー
ジャンル:ライトノベル 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:埴輪星人 価格:1,000円

※最新の価格はストアでご確認ください。

中世ヨーロッパっぽい異世界に、現代日本人が飛ばされて活躍する話。そしてライトノベルを連想させる表紙。とくれば『ゼロの使い魔』とか、まあそういうのを連想するのも無理はないのだけど…。しかし、そうは問屋が卸さないというか、既存のジャンルにかぶる部分が多い作品が、わざわざ書籍化されることはないわけでして。新人賞を受賞した作品ではないけれど、生半可な受賞作よりよほどとんがっております。

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どういう具合にとんがっているかというと、まず物語と呼べるような動きはほとんどありません。電子書籍で500ページを超えたあたりから、ようやく主人公である宏くんと春菜さんのところに、王家の陰謀云々という話が持ち込まれてきて2人は重い腰を上げるのですが、それまではひたすら日本から飛ばされてしまったゲーム世界で生活基盤を築くことに精を出します。モンスターから助け出した美少女がいても、「面倒なことに巻き込まれそうだから」と自分たちが引きこもっている部屋にかくまうだけで、何か働きかけようという気配さえない。この独特の行動原理はなんなのだろう? と考えているうちに、主人公、つまり読者が自分を重ねる相手の目的意識が変化しているのではないかな、というところに思い至りました。

『イリヤの空UFOの夏』にしても、先ほど挙げた『ゼロの使い魔』にしても、主人公は最初こそヘタレでしょうが、ヒロインのために彼らはヘタレを克服して日常の殻を破っていきますよね。彼らにとって、自宅とは疲れ切って寝に帰る場所でしかなかったはず。ところが本作では自宅と呼べる場所の確保こそ究極の目的! と言わんばかりの力の入れようなのですよ。宏くんには一応女性不信になったエピソードが用意されていますが、おそらくそんなものがなくても、彼らは極力他人と関わらずに独力で生活するために行動したでしょう。感情移入の条件が主人公への共感で、本作が書籍化されるほど支持されているということは、これはもうエポックメーキングと呼んでもいいくらいのことだと思うのです。


主役級の人たち。登場人物は多めだ

ゲーム世界に飛ばされる系のお話にとっては、お約束の序盤

「ただ者ではないよー」と書いているのに、宏くんたちは物語に干渉しようとしない

極めつけは、パートナーとなった春菜さんに対しても極力関係を持たないようにする姿勢/p>