ナニから読めば…、とは言わせない! ミステリー・ナビの決定版
更新日:2013/12/17
これまで他のレビューで何度か、「名作とは、なにゆえ名作か」といった事に触れてきました。世の中には星の数ほどの名著があるわけですから、その要素の枚挙にはいとまがありません。きっと名作の数だけ、その要素もあるのでしょう。
しかしながら、脈々と語り継がれるような名作にはそれだけでは全く不足です。至極当然のことでありますが、“語り継ぐ人”がいなくてはいけないんですね。名作がただひとりだけで名作として存在しても、風化してしまえばなんの意味もないのです。多くの誰かに読まれ、影響を及ぼして、語り継がれてこそ、後世に伝わっていくのだと思います。
―――語り部、といってもいいかもしれません。時代を紡ぐ立役者であります。本著は、そういう意味で非常にステキな“語り部”なのです。
東西ミステリーベスト100。これはもうタイトル以外の何者でもありません。国内外のミステリーを、その道の大家、フリーク達が選出するという形式です。国内編のベスト100と海外のベスト100、併せて200作品に加え、それぞれの101~200位までも掲載されており、約400作品近いタイトルが列挙されています。
不動の古典作品から、近年の新作まで、幅広く網羅されており、ベスト100に関しては全て細かな考察つき。上手くネタバレを避けた手引きになっており、読んだことのない作品への良質な道標となってくれます。その作品がジャンルの中でどのような位置づけなのか、ということも解説されているので、新作から古典へ、古典から新作へと、読書の旅のガイドにもなります。
では、全部読んだ方には無用の長物なのか、というとそんなことはありません。解説文やランキングから、ミステリーという文化の“文脈”を観る手がかりになるのではないか、と思います。ミステリーのジャンルにおける“史実”が丁寧にまとめられた本著は、一種の歴史書としても読み応え十分なのです。
映画秘宝のランキング然り、本著然り、その情報は膨大な量です。しかし、文脈や歴史に自ら参加する切符のようにも思います。なんとなく消費していくだけではなく、読む側としての担い手となるのです。それは、ジャンルに参加する楽しみとでも言いましょうか。
1985年に刊行されたものから、27年ぶりの再編ということで、巻末には親切にも過去のランキングが掲載されています。見比べてみるのもまた一興ですが、ここまで来ると、もはや「何から読んでわからない」とは言わせない!という気迫すら感じます。
願わくば、ここに収録された全作品のレビューをしてみたいなぁ、と思うほどの粒ぞろい。間違いなしのオールタイム・ベスト!
目次はこんな感じ
目次その2。コラムもあります
そして、ひたすらランキング…
ランキングの後に、詳細な解説アリ
解説のほか、全作品に「うんちく」付き。アナタも今日からマニア!