エロス的ヘンタイ的日常!? 出口のない性癖に振り回される5人の人間模様

公開日:2013/11/16

ケーキを買いに

ハード : iPhone/iPad/Android 発売元 : 太田出版
ジャンル:コミック 購入元:Kindleストア
著者名:河内遙 価格:※ストアでご確認ください

※最新の価格はストアでご確認ください。

オムニバスです。ざっくり説明しますと、世間的には隠さなければならないような思考、というか妄想に振り回されている老若男女5人の姿を、彼らが利用するケーキ屋さんという横糸に絡めて描いた作品ということになりますか。表題作の『ケーキを買いに』は第6話、エピローグという扱いですので、語感がいいのでタイトルになったのかもしれませんが、ややおまけ的なストーリーとなっています。この作品の本質は、もっと生々しくて、人をどきっとさせるたぐいのものでしょう。

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表紙の女の子、猪田さんは確かに登場人物たちがクロスするケーキ屋さんの人で、みなさん各話必ずケーキなりシュークリームなりを猪田さんのうち、ムッシュ・イノダで買うのですが、『アオバ自転車店』みたいにお客と店主の温かい交流とかそういうのではありません。タイトルの通り、ガジェットは洋菓子なのですが、ほんわか綺麗なものではないです。食べる姿、口元にクリームがついてしまう様子。どれも、さほど描き込まれた絵ではないのに、読んでいる側の胃がもたれます。タイトルにも表紙絵にも矛盾はないのに、読むとまったく別次元の物語が流れ込んでくる。この感覚はなんだろうと思っていたら、『センチメントの季節』を読んだときのことを思い出しました。あの、「なんか思っていたのと全然違うんだけど、一気に読んでしまった…」というやつです。

他の方のレビューを読むと、「変態」というキーワードをほぼ確実に目にします。まあ、確かに登場人物たちは変態でしょう。けれど、コミックの登場人物として、キャラ付けとしての「変態」という枠ではないです。それは、もっと上の次元で作品全体に関わってくる概念だなと思いました。この辺の作風は、作者の河内遙さんが普通科ではなくて、美術高校の油絵科を卒業していることとも無関係ではないような気がします。


各話の世界をつなぐケーキ屋さん、猪田さんのおうち

第2話より。繭子ちゃんが痛みに目覚めちゃう瞬間

作中では数少ない常識をわきまえている委員長さん

委員長さんの「気持ちわる…?」がすべてを代弁しているよう