驚愕の早さ! アフリカランナーたちの走りを究明

更新日:2013/12/17

42.195kmの科学 ― マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:日本放送協会 価格:842円

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今やフルマラソンは2時間4分台を超え、2時間3分台の熾烈な戦いが繰り広げられている。なぜ、あんなにも早く走れる人がいるのだろう? 走れない人が大半の人間社会だから、彼らの強靭な体と精神力は心底、驚きと尊敬の対象だ。

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テレビで放送されるフルマラソンをジョギングが趣味でもないのに見入ってしまう人は多いのではなだろうか。それも「走る」というあれほどシンプルな中に隠された、体の秘密と心の葛藤を誰もが直感的に感じるからでは。そしてさらに驚くべきことに歴代記録の選手100傑の中でケニアとエチオピア出身の選手以外が6人しかいないという。

NHKの取材班はこの中でも、エチオピアのハイレゲブレシラシエ(取材時38才)ケニアのパトリックマカウ(同26才)トウィイルソン キプサング(同30才)にスポットを当てて、前半は、各選手の特徴である「つま先着地」と「かかと着地」の違いや心肺機能を科学的に究明。後半は、彼らの生活や生い立ち、メンタルな面でどうやって早いランナーが生まれてくるのかを詳細にレポートした記録である。

数字での解明もさることながら、ことに早さのオリジンを彼らの生活と人生に辿って行くところが面白い。学校や水汲みに1日軽く7kmは走らなくてはならない環境に生まれた子供たち。そして南米でサッカーがそうであるように、一家を支えるための生活の糧としてマラソンに賭けざるをえない生活環境。そこにひしめく有名スポーツメーカーたちの青田買い現象、高地と裸足という環境…。

どこを切ってもマラソンは「熾烈な」戦いが詰まっている。だからこそ、苛酷で残酷で私たちを惹きつけてやまないのでは。本格的に走っている人には貴重な資料となる1冊。ちなみに私もジョギングが趣味だが、この1冊を読んで、記録が伸びたということは皆無(笑)。素人にはひたすら、人間の体と心の神秘が身に染みた読書となるだろう。


フルマラソンが2時間台を切る日は研究者たちによってすでに予想されている

あんな一瞬の動きも分析するとこうなる

モチベーションという点でお金の話も走りに密接に関わってくる