深まる秋の夜に1話ずつ大切に読みたい色とりどりの短篇作品

公開日:2013/11/25

ひきだしにテラリウム

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : イースト・プレス
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:九井諒子 価格:648円

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秋が深まる中、どのように夜を過ごしているでしょうか。空気が澄み、静かでヘンに落ち着ける夜だからこそ、ちょっとした冒険に時間を使ってみるのはいかがでしょうか。本作を開くと、摩訶不思議な世界が33も広がっています。

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九井諒子というと、『竜のかわいい七つの子』で「THE BEST MANGA 2013 このマンガを読め!」の8位に選ばれた、今ノッている漫画家。その作者の魅力がこれでもかというくらいに詰め込まれた短編集が、本作。「この作者の頭の中、いったいどうなってんだ?」と誰もが思うような斬新でシュールな作品が33本。全体で214ページなので、平均すると1作がたった6ページ程度のボリュームですが、いずれも必ず「引っ掛かり」がある個性的な小世界が揃っています。

ジャンルは、コメディ、昔話、ファンタジー、SFほか、じつに多彩。絵柄もさまざまで、まるで何人もの漫画家が描いた作品を持ち寄ったオムニバスのようなおトク感があります。中には、一度読んだだけでは意味がわかりにくい、深い〜or濃い〜モノも。数ページだからこそ、すぐに読み直せるのが短編のいいところ。読み直すうちに、「あっ」と新しい発見があったりして、お気に入りの話ができたりして…。

本作は、Web文芸誌『マトグロッソ』で連載されていた約1年半分をまとめたものですが、これに加え、「えぐちみ代このスットコ訪問記 トーワ国編」「神のみぞ知る」ほか、タイトルに通じる描き下ろし作品を収録しており、さらにおトク感を増しています。

秋の夜にじっくりと1日1話。それでも1か月間、十分に楽しめます。特に、「予定調和の内容は飽きた」「一気に長いストーリーを追うのはニガテ」という人にオススメしたい異色作。ぜひ。


少女漫画チックな「すれ違わない」。鼻に…鼻になんか刺してるんですけど…

寓話の世界「湖底の春」。しっかりと教訓があります

「世にも奇妙な物語」のような奇妙な世界。それでいてライトなノリの「恋人カタログ」

タイトルに通じる「ひきだし」。ひきだしにテラリウムが収まっているシュールさと不思議感
(C)九井諒子/イースト・プレス