父親が4人? 不思議な家族が巻き込まれた大事件とは?

小説・エッセイ

公開日:2013/12/20

オー!ファーザー

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 新潮社
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:伊坂幸太郎 価格:896円

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どんな子どもの背にも親の影が射す。どうあがいたって子どもは親に似るものだし、ましてや、同じ屋根の下で同じ物を食べて同じテレビを見て同じ空気を吸っていれば、血が繋がっていようがいまいが、自然と似た思考回路を持つのも当然だろう。2人の親の存在さえ子どもにとって鬱陶しいというのに、もし、親が大量に存在していたら一体どうなるのだろうか。自由奔放な母親から生まれたこの物語の主人公は4人の父親と同居するという不可思議な生活を送っている。

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伊坂幸太郎著『オー!ファーザー』は、2014年には岡田将生主演で映画が公開される人気作。過干渉気味の父親たちを疎ましく思いながらも、それぞれの父親の個性をしっかりと受け継いだ主人公が遭遇する数々の事件は映画と合わせて本でも要チェックだ。

由紀夫には父親と呼ぶべき存在が4人もいる。独身時代に四股をかけていた母の恋人達が、由紀夫が誕生した時に「俺の子どもだ」と言い張り、「別れるくらいならみんなで一緒に暮らそう」と4人の男性たちが父親として由紀夫と同居しているのだ。ギャンブル好きな鷹、女好きな葵、スポーツ万能な勲、頭脳明晰な悟…。母親は出張で家を空けがちだが、性格も個性もまったく違う4人の父親たちに毎日干渉され、煩わしさを感じる今日この頃。そんなある日、ドッグレースの賭博会場で偶然に鞄の盗難事件を目撃してしまい、一家はとんでもない事件に巻き込まれていく…。4人の父親たちは、息子を守りきることができるのか。由紀夫は、次々巻き起こるピンチを切り抜けられるのだろうか。

バスケ部では1年の時からレギュラー、勉強でも優等生、おまけに女の子の扱いにも馴れていると噂される由紀夫。外見も性格も職業も違う個性的な4人の父親が由紀夫へ与えた影響は計り知れないのだろう。4人の父親たちに育てられた由紀夫には何でも難なくこなす能力はある。だが、それでも不意に起きた事件に巻き込まれたとなると、思うように対処出来ず、危険な目に遭うことになる。

由紀夫と由紀夫の母親を愛していること以外4人の父親には何の共通点も見出せない。だが、その愛情の深さは何だが微笑ましいし、父親たち同士なんだかんだ仲が良いのも可笑しい。由紀夫がピンチになれば、4人がそれぞれの得意分野で由紀夫を助けようとし、協力して由紀夫を守ろうとする。本当に素敵な父親たちに愛される由紀夫を見れば、苦労はあるだろうが、何だかいっぱい父親がいることに羨ましさすら感じてしまう。

主人公に思いを寄せる多恵子に、無責任な鱒二、裏社会を取り仕切る富田林と周りの登場人物達もユーモアたっぷりだ。ハラハラされられる事件の中で父親の愛や周囲の人々との絆が感じられ、心が温かくなる。ああ、映画公開が待ち遠しい。映画公開前に是非読んでおくべき1冊。


父親が4人いる家庭に育った由紀夫

「母親が好きだからみんな一緒に暮らすことにした」と父親たちは語ったらしい

カバンのすり替えを目撃!

父親の言葉を思い出す由紀夫。由紀夫はあらゆる行動の前に4人の父親、それぞれの言葉を思い出す

由紀夫は危機を脱することができるのか?
(C)伊坂幸太郎/新潮社