ケネディ暗殺事件に新たな真実はあるのか? 謎は謎のまま?

公開日:2013/12/24

ケネディ暗殺50年目の真実

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 講談社
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:ビル・オライリー 価格:1,728円

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1963年11月22日に起こったジョン・ケネディ第35代アメリカ大統領の暗殺については、これまでさんざん語られ尽くしていて、遠く離れた極東の浦沢直樹のコミック『BILLY BAT』でも大きなテーマになるほど。

だが、アメリカ大統領の暗殺というビッグイシューに加えて、大統領自身が若くタレント並みの人気があったこと、死後50年後も実行犯オズワルド以外の真犯人説が噂され続けいまなお謎であり続けているところが、一層その死を神話めかしている。

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フィクションとしても過剰なほど、登場人物がこれまた豪華で、カストロやフルシチョフといった海外の辣腕政治家、米国のお家芸・盗聴の先駆けフーバーFBI長官や、弟ボビーと確執のあったジョンソン副大統領、マフィアのボスだったサム・ジアンカーナや、大統領選に大貢献していながらマフィアとのつながりを理由に関係を絶たれたフランク・シナトラと“真犯人”の噂を立てられた人物は片手では足りない。
脇役たる人々も綺羅星のごとくで、大統領夫人ジャッキー、公民権運動の立役者キング牧師に加え、マリリン・モンローまで登場する。関係者の背景を知るだけで、アメリカ現代史のおさらいができる感じだ。

しかし、この本に書かれているのはあくまでも「おさらい」なのだ。結局謎は謎のまま、50年めの新たな真実などは書かれていない。この事件に元々興味がある人にとってはある意味復習に過ぎない内容。そして興味がない人はそもそも手に取らないはずなのだから、肩すかし感は否めない。

また、連呼される「共産主義の恐怖」といった言葉にも居心地の悪さを感じるし、章ごとに「あと一年で命を失う男は…」的アオリが繰り返されることにも食傷する。訳者の方は端正なあとがき(もっともわかりやすい!)を書いておられるのでドキュメンタリーをエンターテインメントにせんとする原著者の問題ではないかと思う。

正直に言って、目からウロコの真事実も書かれていないし、大統領も実行犯も既に亡くなっているとわかっているわけだからハラハラドキドキ感もないかもしれないが、これからケネディについて勉強したい人は買ってもよいかも。でも既にコミックで読んだ程度にでもケネディ暗殺について知っている人にとっては…?


シークレットサービスの状況など舞台裏については多少面白い記述も

貴重な写真が多数掲載されているところはよい。手を引かれている少女が駐日大使となったキャロライン