ジャンル的には極道ものより、哲学系?

小説・エッセイ

公開日:2013/12/31

純平、考え直せ

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 光文社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:奥田英朗 価格:1,050円

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これまでに極道もの、映画も観たし小説もいくつか読んできましたが、この作品はその極道ジャンルに入るのだろうか? と読後しばらく考えていました。

坂田純平21歳。施設育ち、族あがり、早田組の部屋住みで、北島の兄貴に憧れている…。そんな単純なヤクザの世界の一端から物語が始まります。

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“欲望の街”歌舞伎町も、純平の若いある意味健気な視点からは、闇の世界も少しサンパティックというか。家庭の味も知らず、ただひたすらに「極道」の道を突き進むことしか考えていない彼に、とうとう人生最大のチャンスがやってきます。親分直々に「東雲会のタマをとって男になってくれ」と頼まれ、その申し出にはもちろん一も二もなく答える純平。そこからの彼の「娑婆の最後の3日間」がこの物語の軸になっています。

親分にたんまりと現金を渡され、拳銃を仕込み、やりたいことをやろうと純平は歌舞伎町へ。焼き肉を食べ、ナンパした子とコトにいそしみ、そしてこともあろうことに自分がこれから「タマをとり」に行くことを彼女に漏らしてしまう。その彼女が、純平のことを掲示板に書き込んでしまうあたりから、「極道もの」とは一線を画してくるのかも。

無数のパブリックが純平の動向に注目するなか、彼の自由な時間がどんどん過ぎて行く。その臨場感はなかなかのものです。歌舞伎町の踊り子にこっそり憧れているところも、地元に戻って暴走族の後輩たちに威張り散らすところも純平の素朴さを強調するエピソード。掲示板のスレッドは時間が経つに連れて膨張し、1日を残した純平は不思議な出会いをした元大学教授からもらった本をぱらりとめくったり…。

さて、純平は考え直すのでしょうか。最後まで緊張感あるまま、「現場」へ。続きはぜひ、本作品で! おすすめです。個人的には「極道もの」でなはい気がします、やっぱり。


欲望の街、歌舞伎町が純平のホームグラウンド

元大学教授の「ジイサン」との出会いは、純平の最後の3日間に少なからずの影響を?

威張れるところでは最大限に威張るのが、この稼業