緊急電子化! 堺雅人の「演じること」への思いとは?

小説・エッセイ

公開日:2013/12/2

文・堺雅人

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:堺雅人 価格:699円

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彼の一挙手一投足から片時も目が離せずに、日曜の夜を過ごしていた。そんな週末の楽しみ、『半沢直樹』が終わってしまって寂しい思いをしている者は少なくはない。今年の顔といえば、間違いなく堺雅人だ。『半沢直樹』の決め台詞「倍返しだ」は流行語大賞にノミネートされ、現在放送中の『リーガルハイ』も大人気。役の度にコロコロ表情を変える彼の演技力に日本中が魅了されてやまない。そんな彼の著書『文・堺雅人』が電子書籍化&緊急発売されたというのだから、読まずにいられない。俳優、堺雅人はどのような思いで役を演じているのだろうか。この本には彼の演技への思いがギュッとこめられている。

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高校時代、官僚になるのを夢見ていたという堺だが、彼にとって役者以上の天職はあるまい。彼は生まれながらの俳優のようだ。堺が初めて演技をしたのは幼稚園のクラスで『みなしごハッチ』の劇をすることになった5歳のこと。幼き日の堺は早速図鑑で自分の役の「カベムシ」について調べてみたが、その虫はどの図鑑にも載っていなかった。実在しない虫はイメージがしにくいと先生に相談すると、「それならば違う役にしましょう」と先生は役を変えてくれようとしたらしい。だが、既に「カベムシ」に愛着が湧いていた彼は「この役以外はやれない」などと言って周囲を困らせ、結局その役を演じきったそうだ。堺は当時を振り返りながら、「もし、今カベムシ役を割り振られても、最初に図鑑を引くだろうし、どうでも良いことに拘って周囲をまごつかせてしまうかもしれない」と、当時から自らが少しも変わってないことを語っている。堺はわずか5歳で初めて演技をしたその時から既に熱い役者魂を持ち得ていたのかもしれない。

堺は、「役者の仕事はセリフやト書きを覚えて時間通りに現場に行くことだけ」などと言っているが、それは彼の謙遜であって、本書からは堺が役づくりに真摯に取り組む俳優であることが伺い知れる。「台詞をつぶやく」「時代状況を調べてみる」「同じ作家の別の作品を読んでみる」「共演する方の顔を思い浮かべる」ことはもちろんのこと、時間があれば、遠くだろうとロケ場所に前日までに移動して、現場に自分を馴染ませようとするらしい。バーテンダーの役をやることになれば、シェーカーを手に馴染ませるために素振りを行なうし、将軍の役ならば、「品」とは何かについて何日も真剣に悩む。堺のモットーは「運・鈍・根」。この言葉は、成功するには幸運と根気と、鈍いくらいの粘り強さの3つが必要だという意味だが、堺は静かな情熱を燃やしながら、粘り強く根気強く、役に入っていく。

演じるに当たって俳優はこんなにも様々なことを考えているのか。『風姿花伝』『花伝書』や『論語』『詩経』、中原中也の詩、『エセー』からスタニスラフスキイの『俳優修業』まで、ありとあらゆる文学や芸術書をサラッと引用する堺の博識ぶりにも驚嘆する。大河ドラマ『新撰組』や『篤姫』、映画『ジェネラルルージュの凱旋』や『アフタースクール』の時に考えたことについても書かれているため、撮影の裏話として読むのも面白い。堺雅人の出演作と合わせて読みたい1冊だ。


堺雅人…カッコいい…

女性を好きになる順番は言葉、声、顔の順

高校時代から演劇部に所属していたが、こぢんまりとした文化部だったらなんでもよかったらしい! 百人一首部と演劇部どちらにするか悩んだとか(驚いて線を引いてしまった)

俳優は受身の仕事、などと言いながらも、彼は演技について真摯に考え続けている