本はこれから一体どうなるの? 下北沢「B&B」を仕掛けたブックコーディネーターが見る未来とは?

公開日:2014/1/8

本の逆襲: 10 (アイデアインク)

ハード : iPhone/iPad/Android 発売元 : 朝日出版社
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:Kindleストア
著者名:内沼 晋太郎 価格:※ストアでご確認ください

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一日、日を経るごとに、何処かの街の本屋が閉店を余儀なくされている。年に360店舗あまりと言われる本屋の閉店スピード…。このまま本は滅びてしまうだろうか。人を未知の世界へいざなってくれる本の魅力はもう時代遅れなのだろうか。巷では「活字離れ」が叫ばれ、本の未来を心配する声も少なくはない。

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「本と人との出会い」を作る型破りなプロジェクトを次々と立ち上げるブック・コーディネーター・内沼晋太郎は『本の逆襲』の中で、「出版業界の未来は暗いかもしれないが、本の未来は明るい。」と述べている。彼は、「飲食業界の未来」と「食の未来」、「アパレル業界の未来」と「ファッションの未来」とが別であるように、「出版業界の未来」と「本の未来」とは、別のものとして考えている。

内沼曰く、既存のままの「出版業界の未来」は暗いかもしれないが、生き残る方法は多くあるのだという。「本の未来」に至ってはむしろ明るく、可能性が広がっているのだそうだ。例えば、紙の本や雑誌の売上が落ちてきている一方で、日頃目にする「文字による情報」すなわち「本のようなもの」は、以前に比べて、増えて来ている。「紙の本の時代」は確かに揺らぎ始めているが、「文字を使っての情報のやりとり=本」とするならば、本の世界は、広がっているのだと内沼は語る。

内沼は「本の逆襲」を企み、様々なプロジェクトを打ち出している。例えば、彼は、「書き込みがある本は、かえって『世界にそれしかない』一点ものになる」と発想し、「WRITE ON BOOKS」という、お客さんに本に自由に書き込みをしてもらう本屋プロジェクトを立ち上げた。

本選びについては、本を巡る情報があまりにも多すぎることに目を付け、「文庫本葉書」では、本の中の印象的なフレーズだけをブックカバーとして「本にまつわる情報をひとつに絞る」ことによって、本をグッと選びやすくしようとしている。

また、「SEIREKI BOOKS」では、本を入れて封をしたクラフト袋に、スタンプでその本の初版発行の年を押し、「初版の年」だけでの本選びをさせた。内沼は本について考え抜き、新しい本との出会い、本のあり方を模索し続けているのだ。

内沼によれば、これからの新刊書店が生き残っていくためには、本と相乗効果のあるいくつかのビジネスを組み合わせて、収益源を確保するという「掛け算型」が、最良にしてほとんど唯一の方法であるそうだ。そんな彼が創りだしたのが、下北沢の「B&B」。「B&B」は、本屋×イベント×ビール×家具。毎日面白いイベントを開催し、おいしいビールを提供し、美しい家具を販売することで、相乗効果で本も売れていき、かつ本以外で得られた利益を活かして、本の品揃えに手間をかけて、さらにいい本屋にしていく。そうやって、よい循環を生み出していこう、としているのだという。

本はもはや定義できないし、定義する必要がない。本はすべてのコンテンツとコミュニケーションを飲み込んで、領域を横断して拡張していく。内沼はこの状況こそ「売れない」「元気がない」と言われ続けた、本による本のための「逆襲」であるとしている。「電子書籍元年」などを待つまでもなく、実はとっくに、本は自らの居場所を広げてきていたのだ。

本には無限の可能性がある。さあ、これからどんな未来を創りだそうか。本にまつわる仕事をする人も、只の本好きも、そうでもなあなあという人も、全ての人にぜひ読んでほしい1冊。


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