複雑な乙女心と美味しい食べ物が織りなすミステリー小説?

小説・エッセイ

公開日:2014/1/17

あまからカルテット

ハード : iPhone/iPad/Android 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:Kindleストア
著者名:柚木麻子 価格:※ストアでご確認ください

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彼氏ができて羨ましい、やりがいのある仕事に就いて生き生きしている、○○は美人でいいなぁ。女友達とは同性で同じ目線だからこそときに妬み、羨み、共感する。そして一度話しだすと、どんな状況であっても彼女たちのおしゃべりは止まることを知らないし、正直言うと彼氏なんかより気の置けない存在だったりするのも女友達だろう。男性側から見るとめんどうな関係に思えるかもしれないが、複雑な感情が入り交じりあうがためにお互いを理解できるし、それが居心地良かったり、逆にイライラしたりする。

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私もかつて女友達と絶交寸前まで言い合いしたことがあるが、それは相手の魂胆が手に取るようにわかり喧嘩にまで発展してしまった。でも気の置けない仲だから喧嘩するわけで、それ以降は互い思いやりや気遣いするようになり、これまでのトゲトゲしさが取れた気がする。このように相手の気持ちがわかり過ぎるがゆえにときに良くない感情も沸きおこるということは、男心には理解できないかもしれない。

清楚美人だが奥手なピアノ教室教室をひらく咲子、仲間想いでリーダー格の敏腕編集者薫子、美容部員で女王様気質の満里子、料理研究家でおっとりした性格の由香子…。性格も職業もまったく違う中学時代からの仲良し4人組が、嫉妬や共感を携えながらも互いの職業を活かしそれぞれが水面下で抱える深い悩みを解決していく。

一見まったりとした雰囲気で展開されていくが、その時々に湧いてくる謎を紐解いて行くという、さながらミステリー推理小説のような鋭さがこの作品の味噌となっているのだ。そしてなによりも美味しそうな食べ物を中心に謎解きが展開されるので、まるで目の前にあるように描写されている食べ物に胃も頭も翻弄されっぱなし。作中にでてくる稲荷寿司や甘食、おせちと、リアルに想像をかき立てる文体で読み手の胃をぐーぐーと鳴らすとはある意味官能小説以上に刺激的かもしれない。空腹時に読むのは危険ということを忠告しておこう。

もともと料理研究家を志していたという作者の柚木さん。女性目線で書かれた女友達という複雑で深い関係はときにエスニック料理のようにスパイシー。そして食べ物の描写はホイップクリームのようにふんわり甘い愛情が込められて思わずうっとりする。読み終わるころにはきっと、料理も挑戦してみたくなるだろう。


細かな描写で美味しそうないなり寿司が目に浮かぶ

誰もが一度は食べたことがあり、懐かしさが込み上げる思い出の甘食

料理研究家である由香子は、見事に食材を言い当てる

意外な食材で簡単に作れるおせち料理は勉強にもなる!