奇才・黒田硫黄の第1短編集が電子蚊…じゃなくて電子化

更新日:2014/2/24

大王(1)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : イースト・プレス
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:黒田硫黄 価格:432円

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 「奇才」「本当の“センス・オブ・ワンダー”を持った稀有な漫画家」「“黒田硫黄”はひとつのジャンルである」など、玄人筋で多大な評価を受けている黒田硫黄。第6回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞文部科学大臣賞を受賞し、連続テレビドラマ化もされた『セクシーボイスアンドロボ』の作者、で知る人がいるかもしれません。その氏の第1短編集。奇才の奇才たるゆえんを、デビュー作を含む初期作品を通じて知ることができます。ちなみに、タイトルの『大王』は、作者の愛称から。

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 電子版1巻目の本作では、「西遊記を読む」「THE WORLD CUP 1962」「象夏」「蚊」「熊」「南天」の6作を収録。一橋大学出身のインテリらしく知性とウィットに溢れているとか、予定調和がなく大胆で奇想天外とか、セリフ回しがいちいちシブイとか、絵柄からしてアートであり真っ正直なエンタメ作品とか、登場する女の子が型破りで「萌え」を凌駕する「萠え」の魅力を持っていたりと、さまざまな切り口でプッシュできるのですが、いくら言葉を重ねても黒田硫黄の魅力がぜんぶ伝わるとは思えないので、今回は短編のそれぞれを、端的に超主観で紹介してみます。

●西遊記を読む
…居酒屋で男女が西遊記談義。なぜ解りきったサルたちの冒険をわざわざ読むのか、ウソ話なのに?

●THE WORLD CUP 1962
…思いっきり昭和から、いきなり世紀末の世界大戦。人類絶滅の危機なのに、愛する人のためにまさかのロボット対戦。ズバ、ブビッ、ドガ、グワーン…人類終了へ

●象夏
…同棲の彼氏が、部屋のなにもかもを持っていって、も〜う宙ぶらりん。あれ? となりの部屋にいたのはゾウだった。「ボトルシップみたい」

●蚊
…色っぺー蚊の恩返し。「恩返しって なにができる?」「蚊ですから 血を吸うとか!」。ぱん

●熊
…「御免下さい。熊がずっとついてきてるんです。地下鉄の駅からずっと」「網で捕まえろ」

●南天
…50センチくらいの目玉があれば、日本軍が蹴散らせるのに

何度も読みたくなる作品、読むたびに理解が深まる作品、何度読んでも意味がわからない作品が1冊に収められて、ワケの分からないエネルギーがグルグルと渦巻いています。ぜひ、紐解いて、そのエネルギーに触れてみてください。


よくわからないけれど、なんだかすごいカラー扉絵。中央に恩返しの蚊が。彼女の思惑とは

色っぽい孫悟空?(西遊記を読む)

お隣さんのドアを開けると、ゾウがいた(象夏)

熊がついてくる。ストーカー規制法で捕まるよ、網で(熊)
(C)黒田硫黄/イースト・プレス