大人になるために彼らに必要だった大切な儀式(「このマンガがすごい!」2014年オンナ編 ランクイン!)
更新日:2014/2/3
2月です。私のバイト先の塾では、高校の推薦入試の合格発表があり、続々と良い知らせが届いています。喜ぶ子どもたちを見て嬉しい反面、やはりどこか寂しくもあります。会えなくなる事もそうですが、それ以上に、子どもたちが大人になって行くということが、なんだか私にはとても寂しいのです。みんなずっとずっと変わらず、いつまでもかわいい小生意気な中学生でいればいいのに…。そんなことを思ってしまう季節です。
この作品の登場人物は卒業を間近に控えた高校生たち。主人公である澄花と、いとこで双子の暁生と千夏。幼い頃から仲の良かった3人は、高校卒業という大きな人生の岐路に立たされています。暁生のことが好きな澄花は、毎日暁生の部屋を双眼鏡でのぞきいています。そんな澄花は暁生が好きな故に、彼の秘密を知っているのです。そして千夏もまた、心の中にひとつの小さな秘密を抱えています。
いつまでも変わらず、ずっと一緒にいられたらいいのに。そんな小さな願いを、時間は残酷にも叶えてはくれません。そして、澄花たちは好きな人の秘密を知り、自分の秘密を打ち明けていきます。それはまるで、大人になるために必要な儀式のようです。大人と子どもの中間にいるあやふやな存在の彼らの青春を、少ない台詞と印象的な可愛らしい絵で著者は大胆に描きます。読後の余韻がすばらしい1冊です。
高校卒業を間近に控えた3人の物語
「卒業したらどうするん」 悲しく切ない言葉
暁生の部屋をのぞくことが澄花の日課
思いがけない暁生の告白
千夏と澄花の関係も気になります
(C)ふみふみこ/太田出版