「幸せそうに見られたい」人にはおすすめできません
更新日:2014/2/24
以前、ある女性誌のポスターにのけぞったことがあります。そこにはこう書かれておりました「幸せそうに見えるファッション」。うわー! “幸せそうに”“見えれば”それでいいんだ…。このコピーには、自分が本当に幸せかどうかは二の次、という、背中が寒くなるような価値観が透けて見えます。この「どう見えるか病」の人は存外に多く、本当は欲しくもない服を買ったり、食べたくもないものを並んで食べたり、買ったものや食べたものをせっせとSNSで報告していたりする。読者のみなさんもご覧になったことがあるでしょう。
『リアル・シンデレラ』や『昭和の犬』で自立した女性を描いた著者が、精神的にまったく成長できず、吸血鬼のように夫に寄生するダメ女性・雪穂を描いたのが本作。なので、著者のほかの作品のような清々しさはあまりなく、正直、大変進みにくい読書となったのですが、雪穂がまさしく「どう見えるか病」。成城在住と称して国領に住み(国領もいい街だと思いますが…)、一族郎党に援助してもらいながら私立の名門女子校に幼稚園から短大まで通ったことだけが自慢の彼女は、親譲りの見栄っ張りな価値観だけで行動する。で、そんな彼女の夫となった編集者・小早川が大学教授に依頼した企画のタイトルが「結婚は人生の墓場」というわけ。
しかし、小早川は被害者でしょうか。そこは姫野カオルコなので、寄生される側のダメさ加減も容赦なく描きます。作家や雪穂のアルバイト時代の友人など、価値観が違う人々も登場するのでなんとか一息つけますが、まーこのバカ夫婦の言動には苛つきました。存在が救いとなる登場人物もいることはいるのですが…。この主人公夫婦をどう見るか、あなたがどんな価値観を持って生きているか、試されるような小説と言えるかもしれません。
□ストーリー 4
□設定 4
□文章 4.5
□心動かされ度 4
□面白いよ? 面白いんだけど主人公カップルが毒すぎる度 5
主人公夫婦の他にも数例のサンプルが。醜男で言動も素っ気ないのになぜかモテモテな吉見。その理由とは?
外に出せばよかったのに。などと考えるのは本作中の姫野式レトリックによれば劣等男女ということになっております