有吉ファンが泣いて喜ぶ「哲学」と「毒舌」が詰まった1冊

小説・エッセイ

更新日:2014/2/28

毒舌訳 哲学者の言葉

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 双葉社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:有吉弘行 価格:486円

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 かつて日本テレビで放送されていた『進め! 電波少年』の中で、猿岩石が「ユーラシア大陸横断ヒッチハイクの旅」にゴールしたのは1996年のこと。当時、猿岩石に影響されまくりの中学1年生だった私は、翌年「将来の夢は?」というアンケートに「旅人」というとてもイタい答えを書いていました。「おしゃべりクソ野郎」の発言が飛び出したのは、それからちょうど10年後のこと。まさかあの有吉弘行が毒舌キャラで再ブレイクするなんてあの頃いったい誰が予想できたでしょうか。

 ピュアな若者だったあの頃と現在のキャラクターの違いは、まるでどこかの二重人格キャラを見ているようですが、そのあまりにも振り幅の大きいギャップが今の彼の魅力となっていることは間違いありません。そんな今ノリに乗っている有吉弘行が、今度は、哲学者を相手に毒舌を吐いてくれました。

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 この本で、彼はニーチェをはじめ、有名な哲学者達が残した格言に対して、正直にコメントしています。「金は肥やしのようなもので、散布しない場合は役に立たない」という格言に対し「甘い。貧乏したことないんじゃないのか、こいつ」と返し、「金はよい召使いだが、場合によっては悪い主人でもある」という格言には「僕とは考えが一致しないですね。完全に対立してます」と返します。とにかく色んな角度からさまざまな風味の毒を吐いています。(ちなみにどちらの格言もフランシス・ベーコンによるもの)

 ですが、タイトルに「毒舌訳」とあるからといって必ずボロクソに書いているわけではなく「貨幣は私の力をあらわす」というサルトルの格言には「なんだかんだ言っても、世の中、金です!」とコメントするなど、その通りだと思った時には賛成します。やけにネガティブで現実的な格言にばかり賛成しているところがいかにも地獄を見てきた彼らしく、「有吉感」を感じることができます。

 哲学者の考えを理論立てて否定するという行為は誰にでもできることではありません。売れっ子だった猿岩石時代と全く仕事がなかったどん底時代と、人生における「最高」と「最低」の両方を経験してきた彼だからこそ「哲学者」という肩書きに恐れることなく自分の考えをぶつけることができたのでしょう。

□ストーリー 4
□設定 5
□文章 4.5
□心動かされ度 5
□電波少年思い出し度 5


やっぱり一番参考になるのは「金について」の章(?)
(C)有吉弘行/双葉社