STAP細胞の小保方さんも感銘!人生の奥深さが分かる童話の内容とは

小説・エッセイ

更新日:2016/1/29

ちいさなちいさな王様

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:アクセル・ハッケ 価格:1,404円

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 脳内にあらゆる世界を想像して楽しむことは本当に無駄なことなのだろうか。「普通、25歳を過ぎると次第に想像力は失われるらしい」と聞かされた時、絶望的な気分になった。だが、「子どもだけに見える世界を手離したくない」と執着するのではなく、脳内で自分だけの世界を作り上げてきた分、現実の世界で高く羽ばたきたい。想像は現実社会へ飛び立つための助走なのではないだろうか。世界で活躍する人はきっと現実と理想の間をさまよいながら、努力し続けられた人々なのだろう。あらゆる可能性を信じられる人は誰よりも広い世界を見ることができるのだ。

 アクセル・ハッケ著『ちいさなちいさな王様』は、読む人が想像力をかき立てられるドイツのベストセラー作品だ。STAP細胞作製で話題となった小保方晴子さんが中学2年生の時の読書感想文コンクールで最優秀賞を受賞したことで、今もっとも話題の童話でもある。子どもにはもちろんであるが、大人にもこの本は読んでほしい。可愛らしい人差し指サイズのちいさな王様が、人生の可能性とは何か、命とは何かといった深遠なテーマを語りかけてくる。

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 サラリーマンの〈僕〉の家には、人さし指サイズの王様が住んでいる。王様の世界では生まれた時は大きく生まれるが、成長するにつれ小さくなり、しまいには見えなくなってしまうという。だが、王様はちっとも悲しそうな素振りは見せない。「大きくなるっていうのは、すばらしいことなのだろうか?」小さくなればなるほど、その分、想像力や夢を見る力が大きくなっていくという王様の姿に〈僕〉は何を思うのだろう。〈僕〉と王様の温かい掛け合いの中に、人生の奥遠さを知ることができるだろう。

 大人になるほど、小さくなっていく王様は、「どんどん自分の世界が広がっていく」などというが、人間は生きれば生きるほど、自分の可能性が狭められていく気がして息苦しくなってしまう。大人になるとは何かを失うことなのだろうか。夢を見ることも忘れて、社会人として日常に忙殺されがちだ。だが、命には限りがある。現実世界と夢の世界をどう埋めるのか、失ってしまったものを嘆くよりは、積み上げてきたものを大切にするべきなのだろう。過去を惜しむのではなく、年を取ったからこそ見える世界で、豊かに暮らすべきなのだ。

 自由な発想力さえ手に入れれば、つまらない日常も一変する。王様と一緒に街へ出れば、見慣れた町並みを歩いても大冒険だ。プードルに恨みを持つ男やそれをいさめる「プードル救い機」、しまいには会社への行く手を阻む大きな竜が登場したりする。

 見えないものを見ようとすれば、日常はこんなにも豊かになるし、仕事も頑張れそうな気がしてくる。ミヒャエル・ゾーヴァによる美しい挿絵も美しいこの本を読めば、人生の持つ可能性について深く考えさせられるに違いない。


ちいさな王様の世界では成長するたびに小さくなっていく

王様の話は深い

絵も可愛らしい

主人公と王様が街に出るシーンは特に考えさせられる

アナタが会社に行きたくない、と思うのは竜に邪魔されているからかもしれない

文と絵の調和が美しい。子どもにも大人にも何度も読んでほしい1冊
(C)アクセル・ハッケ/講談社