人は何で救われる? 神か金か。それとも…ロシア文学の巨知が放つ悩める現代ニッポンへの贈り物

更新日:2012/3/7

罪と罰 -まんがで読破-

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : イースト・プレス
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:ドストエフスキー企画・漫画 価格:400円

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“現代の預言書”といわれるロシア文学の最高峰。 ドストエフスキー作品への入門は、ここから始めたい。
19世紀後半。 農奴開放で「自由」を手にしたかに見えたロシア社会は、恐ろしいほどの混沌と荒廃に喘いでいた。

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「土地」の束縛から開放され、「神」を捨てて「金」に走り、その果てに「孤独」という「貧しさ」に束縛されることになる。「金」を貪る強欲の金貸し老婆は殺され、「金」で愛を買う退廃的な富豪は自殺し、「金」で歪んだ正義の貧困者は自失した。

金の論理が支配する国で、利己的な自我拡張と他者抑圧を加速してゆく無縁社会。その中で、魂を引き裂かれる人々。まるで「グローバル化」と「自由」と「金」の論理に翻弄され、貧困と孤独の悲鳴が無音で鳴り響く現代ニッポンの預言書とも感じてくる。

終章で、利他者ソーニャが、利己的正義の廃人ラスコリニコフに、自首を促すセリフ。

「今すぐ広場に行ってひざまずくのよ」
「あなたが汚した大地に接吻して…私が殺しましたと大声でいうのよ」

へその緒から自由になった人間は、再度、その臍帯を“何か”に束縛させなければ、生きてゆけない存在なのかもしれない。

自分だけが正しいと思いこむ病。ドストエフスキーが100年前に予言した病は、恐ろしいほど現実化している

ハイライト・シーンでは、iPhoneがビビビ~ンとバイブレーション。その振動の荒さが、作品の深さをちょっとスポイルするかも

ここでいう“大地”とは何か?母なる大地か?。それとも母に抱かれた記憶か?

(C)バラエティ・アートワークス/イースト・プレス