どこか昭和っぽい光景の中で展開する、心温まるストーリー
公開日:2014/3/13
ひまわりさん、というのはひまわり書房という小さな本屋さんをやっている女性店主の愛称でして。話は、このひまわりさんとひまわりさんに憧れているのだけれど、本が読めない女の子、風祭まつりちゃんを中心に展開します。ひまわり書房では明るく振る舞っているけれど、実は勉強や運動でコンプレックスを持つまつりちゃん視線での展開がある一方で、ひまわりさんには実は先代のひまわりさんという大きな存在があります。
1巻前半では、ちょっとした謎解きっぽい作りのエピソードなど、『ビブリア古書堂の事件手帖』とかあの流れを意識しているのかなと思わせるものもありますが、次第にその影は消えていきます。どうなっていくのかというと、事件性とか、物語のうねりとか、そういう劇としてのお約束を捨てていきます。画風ではなくて、お話の作風として近いのは紺野キタさんの『つづきはまた明日』とか、その系統だと感じました。派手さはないですが、静かに滲みてきます。音楽でいえば、テンポがどんどん速くなって、音数も増えて、ヴォーカルは高音で早口で、という具合にたたみかけるような作りのものばかりの中にぽつんと残った、童謡みたいな感じでしょうか。
絵柄に古さはないです。けれど、描かれている風景に感じるのはノスタルジーだったりします。どこの学校の近くにも、かつてはあったような個人経営の書店があるということ自体がもうノスタルジーですが、ここにはシャッターの閉じていない商店街があり、店主同士にちゃんと交流があり、互いに声を掛け合う連帯があります。水着回、とかそういう理屈ではなくて、季節もちゃんと巡っていきます。朝日だったり夕陽だったり。風のにおいだったり、子どもたちの遊ぶ声だったり。そういう生活のにおいを多分に含んでいる、味わい深い作品でした。
読むと本当にお祭りみたいな子でした
これがひまわり書房全景。どこかにモデルがあるのかな?
本屋ばかりという設定の商店街
静かな午後のひとときって感じがいいのです
(C)菅野マナミ/KADOKAWA メディアファクトリー