1970年代、人種の坩堝ニューヨークにいた日本人という人種
公開日:2011/10/15
ニューヨークの日本人
ハード : PC/iPhone/iPad/Android | 発売元 : 講談社 |
ジャンル:ビジネス・社会・経済 | 購入元:eBookJapan |
著者名:本田靖春 | 価格:432円 |
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所属した新聞社ではエース記者であり、ジャーナリスト、ノンフィクション作家である本田靖春の本。
本著は「週刊現代」の昭和50年新年号から連載された「世界点点」の第一部「ニューヨークの日本人」が加筆され、単行本化されたものである。
1970年代、アポロ計画発動に国民が湧いていた時期のニューヨーク、そこで生活する日本人について記されている。
連載前には、どこへ行ってもいい、何を書いてもいい、一切注文はつけない、という編集指示があったという。著者がニューヨークを題材に選んだのは、新聞社の特派員として、ごく短い期間をニューヨークで過ごしたからである。
ニューヨークには得意と落胆、成功と挫折、巨富と極貧といった対照的な要素が混在し、猥雑でチャンスを伺う世界の若者たちに常に妖しい誘いを放ち続けている。そのニューヨークに引き寄せられ、人種の坩堝に放り込まれ、適合不能を起している同胞の取材が興味深い。
当時、日本人のヒッピー、バックパッカーの間で有名だったニューヨークのホテルの話。通称バンコーと呼ばれたバンコートランドホテル。そのホテルに集う若者の生態などが詳しく書かれていて面白い。世界をうろついている日本のバックパッカーたちは、冬になるとニューヨークに流れてくる。彼らはバンコーでルームシェアし、日本料理店で皿洗いとして働く。ニューヨークの冬は厳しいため、日本料理店は鍋料理で賑わい、店員にも高額チップが振舞われたという。おかげで彼らは1ヶ月間に400ドル相当を貯め、翌春までには2000ドル程度を稼ぎ、またヨーロッパなり、中南米に旅立って行ったのである。それは時にもの悲しく、時に滑稽な人間の姿である。
当時のニューヨーク在住の日本人は人種別のクラスにはカテゴライズされていない。あくまでお客様扱いだった。もし彼らがアメリカ市民としてニューヨークに生活の基盤を置き、社会的な競争者となって階段を昇ろうとすれば、当然周囲からの拒絶反応を覚悟しなければならない。その覚悟が必要だった。そういう環境だったのである。40年経過している現在でも、その環境は変わってはいないだろう。
そこで日本人がどう生きていくか。その道標がこの本には記されているはずである。
目次。ジャーナリストの視点から、12のエピックが綴られている
第1章。私は読みやすく、わかりやすいと感じた。やはりジャーナリストの文章だと思う
あとがき。初版の時から経過した著者の感想である。時代の移り変わり、著者の考え方の変化が印象的である