3度の心肺停止から復活! 女王様が描き出す、女の生と性、そして死とは?
公開日:2014/3/26
「優良物件見つけたからアタックしている」とか「複数同時進行が基本」とか素で言い始める同世代を見ていると、幸せとは何なのかわからなくなってくる。腹黒さでは負けないと思ってきたが、周りの計算高さには到底敵わない。なぜそんなに貪欲になれるのだろう。どうやら世の女は恋愛ばかりに振り回され、常に下らない計算を余儀なくされる生き物らしい。女にとって人生とは一体何なのか。性とは一体何か。幸せとは何か。年を重ねるほど分からなくなっていく。
女王様こと中村うさぎ氏が執筆した『死からの生還』は人生に悩むすべての女性たちに読んでほしいエッセイ集だ。難病にかかり3度も心肺停止状態になったという女王様のこの本はありとあらゆるテーマについて触れられている。生と死、幸と不幸、ネットとリアル、自我と他者、性…。キレイごと一切なしで疑問に感じたことをズバズバと言ってのけ、自分の身に起きたことを語り尽くす姿は痛快。読んでいて心地がいい上に、共感させられる部分も多い。
ネットゲームにハマってネット上での恋に励んでいるという話から、妊娠かと思ったら閉経していた、さらには閉腟してセックスができなかったという実体験まで女王様は何でも赤裸裸に語る。だが、そうかと思えば、大真面目に、バーチャルとリアルの違いやネット世界の魅力と危険性等について、分析してみせるのだ。何に対してでも少しでも「オカシイ」と思ったことは突き詰めて解明しようとする探究心や歯に絹着せぬ物言いはあっぱれ。時に笑い、時に呆れながらも、彼女のどこまでもまっすぐな姿が心に残る。
この本の多くでは、生や性について語られているのだが、背後からは「死」の存在が感じられる。セックスについて語られた次のエッセイでは、食欲がないだとか具合が悪いという話になり、歩行困難となって病院に行ったら、まさかの入院、検査漬けの毎日になったことが書かれているのを読むと、生と死とが隣り合わせであることに改めて気づかされる。死はいつ訪れるか分からない、分からないからこそ、好きなことをなんでもしたい。今を全力で生きたい。死の淵から見事、生還していく女王様の姿は、ドラマよりも劇的。ジェットコースターのような彼女の半生はこれからもきっと波瀾万丈に違いない。
自意識を太らせて、毎日計算ばかりをしている女性にこそ、この本に書かれた言葉は強く胸に響くのではないだろうか。まっすぐに、今を後悔しないように、悩むことがあってもなんだか前向きに生きられそうな気にさせられる1冊だ。
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(C)中村うさぎ/文藝春秋