12年間、片思いを拗らせてきた私に好きでもない彼氏ができた。迷走する私の恋の行方は…?

小説・エッセイ

更新日:2012/3/5

勝手にふるえてろ

ハード : iPad 発売元 : Bungeishunju Ltd.
ジャンル: 購入元:AppStore
著者名: 価格:1,000円

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「生殖促進効果のはずの恋が、逆に子孫繁栄を阻害している。私もドードーと同じく滅びゆく種なのだろうか」──。

中学校のときにひと目惚れした“イチ彼”のことを思いつづけた結果、26歳になっても恋愛未経験で処女の“私”。結婚するならイチとと願うものの、彼が“私”を好きになる可能性はない。

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会社の呑み会で知り合った体育会系の“ニ彼”は“私”に好意をよせてくれるが、彼のことを好きになれそうもなく…。“イチ彼”と“ニ彼”、そして理想(妄想)と現実(生身)の間で悩み迷走する等身大の女の子の姿を、希有な言語感覚と瑞々しい筆致で描きだした、成長の物語。

この物語を、恋愛小説と言い切ってしまうのには、ちょっと抵抗がある。なにせ“私”が、“一彼”と話したのはたったの3回だけ。しかも、中学を卒業してから26歳で再会するまでの間、いちども彼に会ってない。つまり“私”がこの間、恋していたのは脳内の“イチ彼”だ。そして、自分を好きになってくれる生身の男子“ニ彼”とは、デートを重ねながらもその都度不満をつのらせ心の中で悪態をついてばかり。時折、暴走して思い切った行動に出たりはするものの、おそらく恋愛小説ファンが望むような形でのドラマティックな展開は起こらない、既存の恋愛小説とは一線を画した作品なのだ。

しかし、これがとにかくおもしろい。平易な文体や現代的なモチーフを用いながらも、ちょっとした描写や悪態の表現にいたるまで、時に繊細で時にユーモラスな彼女独自の表現には、ほかのひとには決してまねできない魅力がある。

ただストーリを追うだけでなく、その丹念に練り上げられた文章のひとつひとつをゆっくりご堪能いただきたい。


小説本編以外に、綿矢りさ本人によるビデオメッセージと、著者インタビューが収録されている

本文の一部。ウィットに富んだ柔軟で豊かな表現に惹きつけられる

ウィキペディアやmixi、乙女ロードといった現代的なワードが多数出てくるのも特徴的

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