ジジイたちが死しても殴り合い孫を男らしく強く育てる

公開日:2014/4/28

ファイトじじいクラブ

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : KADOKAWA / エンターブレイン
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:山本健太郎 価格:463円

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 超高齢化社会の日本で、高齢者が活躍するコミックが目立ってきました。世界でも屈指の長寿国であり、少産少死型社会を突き進むなか、「シックスポケット」に代表されるように、子どもひとりに対して父方・母方の祖父母までが多大な愛情を注ぐのが、なかば常識になっています。

 さて、有名映画のタイトル『ファイト・クラブ』をもじったような本作『ファイトじじいクラブ』。“じじい”が殴り合う、というのは想定どおりでしたが、「孫を強く育てるため」という理由に意外性がありました。そして、熱い。

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 ボケっとしたところがあるリュウ太は小学1年生。生まれた直後に、初孫の誕生を誰よりも心待ちにしていた父方と母方の祖父がそろって亡くなります。ここからは、少しファンタジー。リュウ太は、毎夜毎夜、ある夢を見るようになります。それは、父方と母方の祖父の殴り合い。巨大な闘神に似た祖父たちは、「今から おじいちゃん達は おじいちゃんとして リュウ太君のために戦うからね よく見ておくんだよ」という決まり文句から、壮絶に拳を打ち合います。

 あるときは“父方”がアッパーカットで勝利し、またあるときはバックブローの奇策に溺れ“母方”が勝利し。祖父たちの毎夜の殴り合いで“男”を学ぶリュウ太は、幼い彼に襲いかかる困難…上級生のイジメや両親の離婚、などに負けない体と心の強さを身につけていきます。

 ところで、本作は新鋭・山本健太郎の処女作であり、短篇集でもあります。表題作「ファイトじじいクラブ」のほか、短編作「空の下の人々」「人になる」「目堂君は幸せ」「シショーカムバック」を収録。ある日とつぜん重力が増したことによる人類最後の日、動物との入れ替わり、引き継がれたメデューサの「呪われた目」、急に◯◯トラマンのように変身してしまう体質、など、ぶっ飛んだ設定や題材を生かしながらも、語られるのは「強さ」「生きること」「愛」「夢」など、ごく身近で普遍的なこと。全体的に多少荒削りなのも、新人らしいフレッシュさを感じられて◎。きっと、ポジティブな人間賛歌に、素直に気持ちよく感動できます。


祖父たちの殴り合いを見て強く育ったリュウ太

じつはメデューサの目を持つ目堂君は、常にヘルメットをかぶっての学校生活。それゆえ、イジメられる彼だが、自分の秘密を知ったとき…(目堂君は幸せ)

望まず変身体質がある大御所漫才師の苦悩とは(シショーカムバック)