壮絶なバトルシーンがつるべ打ちのアクションコミック

更新日:2016/1/8

ZETMAN 1

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 集英社
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:桂正和 価格:500円

※最新の価格はストアでご確認ください。

 私は弱虫なので戦うのが嫌いだ。喧嘩なんか滅相もない。『ドラゴンクエスト』もⅣまでやってもういいやとさじを投げたのも、バトルが億劫になったからである。やっとレベルを上げたかと思うと、モンスターの方も力をアップさせてくるので、また一からやり直しかよと弱気がさすのである。

 『ゼットマン』には過激な暴力シーンが連続する。腕が切り落とされ額が貫かれ、拳が腹から背に突き通り、血まみれの場面が次から次へと描かれていく。こんなに戦って疲れないかと思うのだがヒーローは疲れないのである。サウナに入ってビタラガを飲むヒローの図はそうとう腰砕けといってよい。

advertisement

 だが、青少年はたいそう暴力が好きだ。暴力の意識はないのかもしれないが、戦って相手が倒れるとスカッとするのである。もっとも、戦いはするものの戦争のようなマスとしての闘争にはあまり興味はない。肉弾戦に限る。誰が強いかである。

 そうでありながら、青少年たちは街へ出て、誰彼かまわず因縁をふっかけて組んずほぐれつにおよびはしない。痛いからだ。現実の肉体は電柱にぶつかっただけでもかなり痛い。だからこう言いかえてもいいだろう。青少年は暴力のファンタジーが好きなのだ。

 その意味では『ゼットマン』はとても面白い。

 ホームレスの「じィちゃん」の孫として育てられたジンには驚異的な身体能力があった。平和に暮らしていた2人の前に、ある日異形のモンスターが現れジンの生活は一変する。一方、大企業アマギコーポレーションの創立者アマギは、みずから作り出した生命体「Z・E・T」と「プレーヤー」を抹殺すべく、「ゼットマン」なる個体を探していた。やがてジンは「覚醒」し、モンスターたちと壮絶な戦いに突入する。果たしてジンこそが「ゼットマン」なのか…

『ゼットマン』の中に飛び散る血は、リアルな感触を持っていない。生々しさがないのだ。スプラッターホラーのようなえげつない感じは漂わせない。乾いた紙面はページをめくるスピードを加速させる。

『ゼットマン』にはダークヒーローの側面もある。「心の闇」を背負ったヒーローが正義や道徳や愛への疑いを垣間見せながら戦い続ける姿は魅力的だ。ダークヒーローはキャラクターに奥行きを与える。「いいもん」が「悪いもん」をやっつけてよかったね、では現れない余韻を読者に手渡すのである。

「ゼットマン」はどこまで読んでも、なかなか物語の全容は見えてこない。どこまでも膨らむストーリーである。この吸引力にあらがえるものはいるのか。


ジンの身体能力は驚異的 当然ケンカも強い

じィちゃんとの暮らしは貧しいが穏やかなものだった

偉業の殺人鬼との出会いがジンの人生を大きく変える

アマギコーポレーションのアマギはゼットマンなる個体を探している

じぃちゃんの死によってジンの中に初めて芽生える感情は物語の新たな展開を感じさせるのだ

ジンの怒りは彼のうちに眠る異形の何かを覚醒させていく