リア充になるにはどうしたら良いの? リア充もどきの青春地獄ストーリー!

更新日:2015/9/29

モンクロチョウ(1)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:日暮キノコ 価格:540円

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 「かつてはその人の膝の前にひざまずいたという記憶が、今度はその人の頭の上に足をのせさせようとするのです」。夏目漱石の『こころ』の中の台詞は時代を問わない真理なのだろうか。人は誰もが強い劣等感を抱えて生きている。本当は格付けし合うことなど不要なはず。だが、悲しいことに私たちは誰かを見下すことでやっと生活できるのではないか。自分よりも上にいたはずのものが、気が付けば足下にいるとなれば、大チャンス。踏みつぶさずにはいられないのが、人間の性なのだろう。

 日暮キノコ氏著『モンクロチョウ』は似非リア充を主人公にした青春マンガだ。心に劣等感を抱えながらスクールカースト上位に入りたいと悪戦苦闘する登場人物たちの姿は狂気染みている。だが、誰もが一度は経験があるのではないだろうか。他を羨んだり妬んだり、そうでないなら他と比べて優越感に浸ったこと、アナタにも一度くらいはあるだろう。

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 主人公は高校2年生の岡部正也。他校の女子にモテモテな「チャラ高」に通う彼は、日々仲間とカラオケ、合コンと遊びまくりの生活を送っていた。だが、彼は見た目も悪くないのにどうもうまくたち振る舞えない。ある日、デブで鈍臭い幼馴染の桃子が既に経験を済ましていることを知った正也。合コンで出会ったリサにも経験がないことを看過され、激しい劣等感に苛まれる。スクールカースト下位の山口に、正也はリサとの情事を押し入れから覗き見させてみたり…。変わろうとする正也だが、なかなか脱皮することができない。本物のリア充に対する憧れとコンプレックス。性の芽生え。女たちに翻弄され、正也はどうなってしまうのだろうか。

 幼き日の正也と桃子は上も下もなく、男でも女でもなく、ただ仲間としても暮らしていたはずだ。いつから正也は桃子を見下すようになったのだろうか。なぜ私たちは互いにランク付けし合わないといられないのか。虚栄心に満ちた世界の中でどうすれば、信頼関係を結べるのだろうか。

 近世、日本では差別的に「上見て暮らすな、下見て暮らせ」という言葉が満盈していた。自分よりも低い身分の者を蔑むことでしか、私たちは生きられないのだろうか。上も下もないはずなのに、私たちは何と戦っているのか。心の内のドロドロした感情をギュッと濃縮したこの本はすべての人に届けたい作品だ。


リア充を目指し、奮闘する正也(1巻)

幼なじみの桃子はデブで鈍臭い。仲間意識を持ちつつも、正也は彼女を見下していた(1巻)

ある日、ひょんなことから山口と仲良くなる正也。「本当の友情が築けるのでは?」と期待するが…(2巻)

ダイエットに成功した桃子に再会…(2巻)

変わっていくみんなに置いてかれていっている気がする正也(3巻)

いつになったら青春地獄から抜け出せるだろうか。いつになったら素直になれるのだろうか…ラストまで目が離せない作品だ(3巻)