名作を斜め上からメッタギリ! 文学に出てくるダメンズたち

更新日:2014/5/23

文学男子─BUNDAN─

ハード : PC/Android 発売元 : 集英社
ジャンル:コミック 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:いのうえさきこ 価格:584円

※最新の価格はストアでご確認ください。

 『レ・ミゼラブル』『嵐が丘』『リア王』『車輪の下』『曽根崎心中』…名前は聞いたことはあるけれど、実際に読んだことはない。古典名作は難しそうだから、あまり読む気がしない。などと、私が高校生だった頃にぼやいていた友人もいました。あの頃にこの『文学男子─BUNDAN─』を知っていたら、きっと迷いなくすすめていたでことしょう。

 「古今東西の文学男子はどいつもこいつもダメ男ばかり」と名作のヒーロー(含むヒロイン)を一刀両断! わずか6ページ以内に名作の大まかなあらすじからツッコミドコロまでを心おきなく披露してくれます。

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 本作では世界名作の感想エッセイ漫画が集められております。その内容は名作に出てくる男性へのツッコミどころとダメ出しが中心。なかでも私が面白いと思ったのは『レ・ミゼラブル』についてでした。

 この主人公のジャン・バルジャンは文学ヒーローダメ男たちの中にして、燦然と輝くお人好し。腹を好かせた甥姪のためにパンを盗み、長い監禁生活ですさむもある司教に出会って会心。以降は一山あててお金持ちになり、また善良な人柄を買われて市長にまでのぼりつめます。

 そしてひょんなことから知り合った娼婦の娘を探すために旅に出て、途中で誤認逮捕された男を助けるために自分が徒刑囚だったことを告白、終身刑として護送される途中に「あの娼婦との約束をまもらねば!」と船から海へと飛び降りて脱走、悪徳宿屋で児童労働をさせられていたコゼットを奪還して、と三面六臂の活躍をみせます。彼のひたすら人のために尽くす行動には、筆者も「もはや神の領域」「とっても感動しますがまったくマネできません」「オリンピック級」と大絶賛。

 しかし彼が心の底からコゼットを愛しており、生き埋めになっても気合と根性で「コゼットのために生きる!」と生還を果たしたときにはロリコン疑惑を投げかけたりと、鋭いツッコミも忘れません(笑)

 このような形で、古今東西の名作がわかりやすく簡潔に、かつ面白くまとめられています。『レ・ミゼラブル』を含めて他17作。『車輪の下』は「美少年はいかにして童貞のまま死に至ったか」、『リア王』は「1604年頃の作品にして現代の高齢社会に通じる問題がみっちり」というような話である、と言われると原作を読んでみたくもなってきます。名作への入り口として、とても良い作品でした。


頑なだったジャン・バルジャンは司教のもとから食器を盗むが、司祭はジャン・バルジャンをかばいます。司祭の言葉にジャン・バルジャンは改心を決意。これがオリンピック級のお人好しが誕生した瞬間!

一番下のコマに、コゼットのために根性で生き返るジャン・バルジャンの姿が…確かにこれは疑惑をもちたくもなる…かも…?

その生き様から、出会った者の心を次々に救っていくジャン・バルジャン。もはや神の領域です