好きは楽しい。好きは苦しい。たとえ、それが“オトコの娘”であっても

公開日:2014/6/4

オトコの娘ラヴァーズ!!

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : ミリオン出版
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:吉田悟郎 価格:540円

※最新の価格はストアでご確認ください。

 一応コミックに関わるお仕事をしているので、『おと☆娘』(おとにゃんと読む)という雑誌の創刊は知っていた。「そんなニッチなジャンルですら雑誌になるんだなあ」と感心したのを覚えている。(ちなみにその雑誌はその後『おと☆娘Ω』と名前を変え、2013年に「一時休刊」となってしまった)
 そんなニッチな雑誌に掲載されていたコミックに、まさかこの電子書籍の大海で出会い、そしてレビューすることになろうとは、その雑誌を知ったばかりの頃の私はまったく考えもしなかった。

 オトコの娘(おとこのこ、と読む)とは、身もふたもない言い方をしてしまえば女装した男子である。それは常日頃から女装をしていて、その理由を聞かれれば「だってこっちの方がかわいいんだもんっ」と言い切ってしまう、男子のくせに女子力がやたらに高いキャラクターであったり、何らかのきっかけで女装することに快感を見出して、そんな自分と普段の「オトコ」の自分にギャップを感じながら生きる悩めるキャラクターであったり、例を挙げてみればそんなキャラクターたちを指して言う言葉だ。具体的にキャラクターが頭に浮かんだ人もいるだろうと思う。

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 この物語はそんな「オトコの娘」というジャンルにハマってしまった男の子が、そんな自分の萌えを叫んだり、その萌えに疑問を感じて苦悩したり、他の「オトコの娘萌え」な人々と交流したりして時に意見を戦わせたり、同じ萌えを叫んだりしている、ちょっと毛色の違う青春もの、…みたいな話、だと思う。たぶんきっと。

 自分が大好きなものを、理解のない他人にわかってもらうことは非常に難しい。しかもそれがオトコの娘なんていうニッチなジャンルならなおさらだ。わかってもらえない苦しみや、同好の士を見つけたときの喜び、同好の士とちょっとしたことで意見が食い違い、気まずくなったときの苦々しさ…おそらくそれはどんなものにおいても、どんなジャンルであっても味わうものなのだと思う。

 好き、は苦しい。好き、は楽しい。オトコの娘なんてニッチなジャンルでもそれは同じことだ。ニッチなジャンルの萌え語りに終始するかと思って読み始めたこの作品がそんなことに立ち返らせてくれて、大いに面食らった私がそこにいた。


オトコの娘、という存在をわかりやすく表現した扉絵。つまりはこういう男の子のことです

オトコの娘に萌えを見出してしまった主人公・学。確かに下手するとエロ本よりも見つかるとめんどくさい…

無理解な周囲に苦悩するけど言えない学の心の叫びがずらずらと

オトコの娘を愛でる男子にとっての地雷というか禁句というか

ただでさえニッチなこのジャンルでも、かなーり詳しい分類がある