“妹”を覗く男、“お兄ちゃん”からの復讐を待つ女──映画にもなった話題作が電子書籍で登場!

小説・エッセイ

更新日:2012/3/7

乱暴と待機(本谷有希子)

ハード : iPad 発売元 : MEDIA FACTORY
ジャンル: 購入元:AppStore
著者名: 価格:500円

※最新の価格はストアでご確認ください。

今回、私がご紹介したいのは、演劇界と小説界を股にかける鬼才・本谷有希子の『乱暴と待機』です。

一見かなり奇妙だけど、あるイミ恋愛よりも切実で濃密な男女の関係性を描いたミステリタッチの作品で、著者初! の電子書籍。 そしてこの小説、じつは私が編集を担当した本の中で初めて電子書籍化された作品でもありまして。

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内容はといいますと、“お兄ちゃん”こと英則は、ひとつ屋根の下に暮らす“妹”奈々瀬に、この世で最も残酷な復讐を目論むべく、日ごと天井裏から彼女を覗きつづけ、奈々瀬は奈々瀬でつねにドン臭い格好(画像参照)で家にひきこもり、英則を“喜ばせる”ためのネタを考えながら復讐されるのをおとなしく待っている──

とまあ、これだけ聞いてもちょっと理解しにくいかもしれませんが(笑)、じつはさらにおかしなことにこの2人、復讐の理由を“覚えてない”っていうんですよ…。でも、彼らの間ではこの関係性が立派に成立している。

…え? なんじゃそれ!? ってなるでしょ? それを代弁してくれるのが、もうひと組の男女・番上と梓。 この2人が「気持ち悪い!」だの「頭おかしい」だの「嘘っぽい」だのいいながらも、嫌がる彼らに無理矢理かかわっていくことで、英則と奈々瀬が形成する異様な世界の全貌と、あらゆる“謎”が徐々にあかされていくわけですねー。

あ、ちなみに、復讐の理由も後半であかされますが、じつはさらに、思いもよらないような驚きの事実が判明しますので、(特に男性の方は)心の準備をお願いしますネ。

英則と奈々瀬の間には、いくつもの暗黙のルールが存在している

人に少しでも苛つかれることを恐れるあまり取る行動すべてが裏目に出て、結果的にますます人を苛つかせたり、引かせてしまったりする特異な個性の持ち主・奈々瀬

後半、英則と奈々瀬が二段ベッドの上と下で“嘘の会話”をするシーンがあるのですが、このシーンはもうなんど読んでも泣けます……!

10月より同タイトルで映画公開された本作。小説では、おもに4人の一人称が章ごとに入れ替わりながらストーリーが展開する構成をとっていることもあり、より彼らの関係性・メンタリティにフォーカスした内容となっています

本谷の著作の中でもかなりエンターテインメント性の高い作品だし、長編でも全30章と細かく章が別れてるので、すきな時に取り出して1章だけ“覗き読み”なんてことも可能なので、手軽さがウリの電子書籍との相性バッチリ

画面中央をタップすると、上下にこのようなメニューバーが表示されます。右下の「設定」(歯車のマーク)内では、書体や文字サイズ、行送りなどを自分好みに変更することができるので、ぜひお試しを

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