わがまま魔法少女と頑固一徹じいさん。なんという微笑ましい出会い!【第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作】
更新日:2015/9/29
第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作品、というだけで興味をそそられる人も多々いようが、とりあえずはこのマンガのおすすめポイントを聞いてほしい。それは“萌え語り”、と呼ばれるものかもしれない。
年齢を重ねるということは、経験とそれに伴う知識をバームクーヘンのように重ねていくことだと思う。そんな経験と知識のカタマリであろうお爺ちゃんが、このマンガに登場する蔵六というキャラクターだ。新宿歌舞伎町という雑多な街で、イベントに使用する花の手配とフラワーアレンジメントなんていう、いかつい顔に似合わない仕事を生業としている、自他ともに認める「曲がったことは大嫌い」な、絵に描いたような頑固一徹じいさんだ。
そんな頑固じいさんが、「思い描いたものを何でも具現化できる」という不思議な能力を持った紗名と出会うことで物語は始まる。そんな超能力を持つ紗名は例によって、その力をなんらかの企みに利用しようとしている謎の研究所に幽閉されており、その研究所の悪行をふとしたきっかけで知った彼女はそこを「ぶっつぶしてやろう」と思って脱出し、追手から逃げている最中に蔵六と出会った。
過去にその能力を使って何でもほしいものを手に入れてきた彼女は、蔵六を「いいやつそうだ」と判断しこう言う―「お前を私の家来にしてやろう」と。そして、「なんでも願いを叶えてやろう」と誘いをかける。しかし、曲がったことが大嫌いな蔵六は店の中で大声を出した紗名に「店で大声を出すな」と叱りつけ、空腹の紗名にご飯を食べさせてやり、「大人の問題は大人が考えるべきことで、お前はとりあえずその曲がった根性を直せ」と諭して身寄りのない紗名を自分の家でひきとってやるのだ。
なんという迫力のある大人! なんというがんこじじい! ぶっきらぼうな言葉に覆い隠された懐の深い優しさ、そう…ツンデレ!
1巻読了の時点でこれから先に待ち受けているであろう波乱と、おそらくその先にあるだろう蔵六と紗名の別れを想像して泣けてしまいそうなぐらいに胸が締め付けられる。それでも、蔵六の言動に笑ったり泣いたりしている紗名を見ると、この2人の出会いはすばらしいものが生まれるきっかけであると確信できるのだ。
ここまでつらつらと重ねてきた言葉は「わがまま少女と頑固じいさんの組み合わせ萌えー!」のひとことに集約されてしまうのが難儀なところだが、まあそれは事実なのでしょうがない。
タイトルの通り、ところどころにアリスのモチーフが使われていたり、引用がなされていたりする
アキバで偶然会った臼田くんの逆鱗に触れてしまう
紗名と蔵六との出会い。トラブルホイホイな蔵六
「いきなり自分の車に乗ってた知らないガキ」でも蔵六のスタンスは揺るがない
追手である彼女たちも、紗名と同じ「研究所」にいる子たちらしい
魔法少女たちに鉄拳制裁。かっこいい!