日本一高い頂から見下ろし見上げる光景に、とことん魅せられたい

更新日:2014/7/3

テッペン! 死ぬまでに見たい、富士山頂からの絶景

ハード : iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
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著者名:小野庄一 価格:※ストアでご確認ください

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 人は高いところが好きだ。

 スカイツリーができたといっては目の色を変えてよじ登り、グランフロントがオープンしたといっては錯乱したように押しかける。なぜ高いところがそんなにも好きなのかといえば、ひとえに、高いからだ。恋に理由がないように高さへの欲望には理がないのだから恐ろしい。高さへの信仰は不気味なほどとめどないのだ。深くえぐれた穴の底につめかけ、ひしめきあってため息をつくものなどいやしない。

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 世界遺産騒動をめぐって以来、富士山への注目はことさらにヒートアップした。なにしろ日本一高いのである。高さと同時に、日本一にも我々は弱い。日本一の自殺の名所なら、ぜひ一度死んでみたい気がする。日本一でなければ桃太郎などただの桃だ。

 そんな日々の今日あした、土日ともなれば、富士の登山道は長い行列で埋まるという。人の後ろについて黙々と歩く。それは、登山というより行進だ。それでも後を追うものは絶えない。飲食店を例にとるまでもなく、行列のできる物件には、さらに行列のできるのが世の習いなのである。しかし、あとからあとから行列のしっぽに加わる人の群れが、命がけを思わせる勢いで下から行列を押し上げるとしたら、山頂はつま先立ちしたまま身動きもとれない人間の塊になっているのではと妄想される。

 写真集『テッペン! 死ぬまでに見たい、富士山頂からの絶景』には、富士の高嶺からとらえた、数々の壮麗な風景が収められている写真集だ。まさに驚くべき絶勝たちのパノラマなのである。

 たとえば、いわゆる御来光と呼ばれる日の出の有様は、雄大な光のページェントそのものだ。なにか神秘的な空気さえ迫ってくる。理性がやめろとほざいても、ついつい手を合わせたくなる神々しさである。いにしえに、太陽を神とあがめたよりどころは、こんな風景を目にしてしまった人々の素直な気持ちだったのでは、と思わされてしまうので、ちょっと恥ずかしい。

 あるいは雲。眼下に悠久の時を超えたのだろうか悠揚とたなびく雲海の壮大な姿は、驚異のランドスケープと呼んで差し支えあるまい。もっとすごいのはカバー写真に使われている一葉。富士をそっくり型抜きしたごときこの雲はなぜCGではないのだろう。CGだろう。CGですよね。でなければ、さる傾向の人々は富士山型UFOだと決めつけるに違いない。確かにアダムスキーに見えないこともない。しかしリアルなのだ。リア富士なのである。

 色彩もすごい。夜明け前のかそけき空と地にまたたく町の光。月と星とが競合する夜空の深遠ぶり。明け方の一日の始まりの茜。紫雲とはこのことかと感動する雲の形。涼しい気持ちになってくるのを押さえられない。

 撮影者が9年間の夏をかけて撮りためた富士のテッペンは、富士写真のテッペンでもある。

登山道を頂上へと向かう人々の光は幻想的である

そば焼酎でない雲海

厳かな気持ちを誘う御来光

富士は影もけた外れ

群雲に隠れた厳かな光

雲もこうなると超自然的

雲の輝きに見とれる

宇宙が手に取るようだ

フェニックスの化身かと目を疑ように雲は流れる