1巻は、正直泣けます。繊細な少年たちの心がひりひりと痛い、スポーツ青春小説の代表作
更新日:2012/2/3
以前に森絵都さんの『DIVE!!』をご紹介させていただきましたが、あの作品を読んだきっかけは、この『バッテリー』でした。
読んだあと(当時は3巻くらいまでしか出ていなかった)に「すごい作品に出会った! めっちゃドキドキする! やばい、こんなスポーツ小説読みたい!!」と、手当たりしだい探したあとに見つけたのです。
前回も書きましたが、スポーツを観るのもやるのもたいして興味がない(野球のルールもあほみたいに知らない)、団体競技とか部活とか、あんまり得意でないわたしのような、完全文系人間の心を、強く強く揺さぶった作品です。
幼いころから、自然とボールに親しみ、もはや「好き」なんて生ぬるい言葉では表現できないほど、本能で野球を、投げることを欲している巧。その巧の稀有な才能に焦がれ、いつかその球を受けたいと願っていた豪。
巧が豪の住む新田に越してきたことで、出会ってしまったバッテリー。13歳の彼らの、じれったいほどに繊細でまっすぐな心と強い誇りを描いた小説です。
他者を必要としない、とことん傲慢な巧と、周囲を常に気遣う、おおらかだけどやさしすぎる豪。あらゆる意味で対照的な二人は、けれど、秘めた熱があることにおいて、野球に向ける想いについては同じ。
だけど、若い。青い。幼く、もろい。それゆえに、ぐらっぐら。 傷つき、乗り越え、迷い、向き合い、また惑う。終わらない葛藤。 これでもか! という思春期の抽出にどきどきします。
他者に依らない弱さ。 他者を知ったがゆえに生まれる弱さ。 もちろんそれは反転すれば強さであるけれど、コントロールできずに転ぶ。
たまりません。
1~2巻はそれ単体で完結していますが、3巻以降は完結していないとも言えないもののノンストップで駆け抜けたくなること請け合いなのでご注意。ちなみに最終6巻だけまだ電子化されていません(泣)。
もとは児童書ですが、この文字組みで600ページもあります。読み応えじゅうぶん。フォントの大きさ、組み方向はもちろん変えられます
新田の雪多い情景と、余分を一切口にしない巧の心情とのリンクは読みどころ。ほかにも情景が丁寧に描かれていて、たくさんの少年たちの心と重なるのです