学問をすれば出世もできるし、世の中の役にも立てると信じられた時代のまぶしさ

更新日:2011/9/21

現代語訳 学問のすゝめ

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : インタープレイ
ジャンル: 購入元:eBookJapan
著者名:伊藤正雄 価格:648円

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「学問のすゝめ」は読みたいと思いつつも、文語体で書かれた原文を読むのはおっくうで敬遠していた。現代語訳がなかったら読むことはなかっただろう。読んでみると、当時の小学校の教科書としても使われただけあって、内容も用いているたとえも平易でわかりやすい。

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この本の最初から最後まで、読んでいて感じたのは、世の中が変わり、人々が平等になり、自分のしあわせと国の繁栄を信じ、青雲の志をもてた時代のまぶしさ。西洋に追いつくために、しなければならないことは山のようにあり、学問を修めればそれに応じた仕事に就くことができ、世の中に役立つことができた。
  
諭吉は「日本も西洋諸国も同じ天地間の存在である。<中略>こっちの国に余ったものはあっちの国に与え、あっちで余ったものはこっちでもらう。<中略>ともに相手の便宜を図り、ともに相手の幸福を願う<略>」と書いているが、国家間の関係が本当にそんなふうだったらどんなにいいだろう。そんなナイーブな理想を掲げる諭吉がなんだかかっこいいなと思ったが、そんな理想も、この時代だからこそもてたのだろう。
  
また、おもしろいのは、諭吉はしばしば孔子を引き合いに出して、その考えに真っ向から異を唱えているところ。孔子の時代とは違う点を考慮することなく、むやみに孔子の教えをありがたがるなと言っており、また、「女性と小人(下層の民)は手に負えない」という孔子に対しては、「自分の教えでその種を蒔いているくせに」と反論する。天下の孔子様に対しても、歯に衣着せずに持論を展開するあたりは、諭吉の人柄が感じられて痛快。
  
今の時代に生きる者から見ると、「学問のすゝめ」が読まれた時代がまぶしくうらやましい。当時の人々が希求した自由も平等も、社会的な様々なインフラもすっかり整った時代に生きているのに、皮肉なものだ。

目次。男尊女卑を否定する八編。この時代に諭吉が男女同権をここまで考えていたのかと思うと、女性としては感動を覚える

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」かの有名な冒頭部分。アメリカの独立宣言の一節を諭吉流に表現したものと考えられている。名訳だと思う

2000年前の孔子の教えをそのまま踏襲しても意味がないと説く (C)伊藤正雄/インタープレイ