無駄だからこそ素晴らしい! 思春期女子のドタバタに思わずクスリ

更新日:2012/4/3

シンプルノットローファー

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 太田出版
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:衿沢世衣子 価格:500円

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思春期…時間と体力だけはやたらとあったあの頃の、暴走しがちな「情熱」を鮮やかに描いたのが衿沢世衣子先生の『シンプルノットローファー』です。

例えばハンダゴテが無駄に上手で家電の修理に熱中する「りょうちゃん」。寝食する時間を削ってまで映画鑑賞に燃える「チヒロ」。

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サッカーが好き過ぎて校内でリフティングしては方々で怒られる「ナカジ」。学校の調理室で干し肉を作ってしまう「しぃちゃん」…ああ、なんという不毛感と清々しさ!

本作は「モンナンカール女子高等学校」に通う26名の生徒を描いた全12話の連作集です。年ごろの女子が数多く登場するにも関わらず、恋だの愛だのはまったく描かれることはありません。衿沢先生はひたすら軽やかに、そして愛情を以て、かごの中のハムスターのようにドタバタと走り回る彼女たちを描きます。読む者の頬が思わず緩むほどに。

絶賛大ブレイク中の衿沢先生ですが、私はこの作品がいちばん好きです。全1巻ながら26名のキャラクターは見事に描き分けられていて、きっとあなたはそこにかつての級友の姿を見つけることができるでしょう。

プロローグはみなで凧あげをする話。なぜ凧あげかと言えば、それはそこに凧があったから! 一連のプロセスは登場人物の紹介にもなっています

家電製品の修理が得意なりょうちゃん。最近付き合いが悪いなあ、と思ったら実は…というchapter.02「リペア」

寝食削って映画を観に行くチヒロ。自分も似たようなことをしていた記憶があります。昼食代を削ってマンガを買っていたのです!

ダンスが好きでニューヨークに憧れるヨシコ。思春期にありがちな西洋への憧れと、なんとなく日本が嫌いな感じ。よくわかります

毎朝いちばんに登校しては自前の豆とミルとメーカーでコーヒーを入れるくぐみ。なぜそれをわざわざ学校で!?というのは愚問です

空き地で出会った「ババア」に誘われ、まんまと本気のバトミントン勝負を始めるエイとジマ。日が暮れるまでの猛練習の果て、遂にババアの魔球をマスター!

唐突に作動に目覚めたナッちゃん。学校中から畳などの道具をかき集めて野点を催します

最終話。あまりの暑さに耐えかねて、「昔からの夢」をかなえる女子3人。本作を象徴するエピソードで、私が大好きな1シーンです (C)衿沢世衣子/太田出版