聖水、触手椅子、セクサロイド…エロネタに秘められた伏線を見破れるか

公開日:2014/8/8

へんなねえさん

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 太田出版
ジャンル:コミック 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:吉富昭仁 価格:540円

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 SFと言えばロボット・タイムマシーン・宇宙人が三大お約束。本作『へんなねえさん』でもしっかりとそのあたりをきっちり握った短編集なのですが、その中身がまったくもって斬新すぎて予想外でして。出てくるのは触手椅子、セクサロイド、背中にチャックのついたお姉さん。なるほど、この作品のSFとは「すこし不思議な物語」の略だったんですねぇ、なんて思っていたら所がドッコイ。てんでバラバラな方向に広がっているとばかり思っていた、エロくてお馬鹿な話は、見事な伏線となってSF作品として1本にまとまってしまうのです。

本作の中身は11作の連作短編と1つのおまけによって構成されています。
あしたのあたし…まあやは筋金入りのナルシスト。くぐると昨日に行ける不思議な姿見を手に入れた彼女の、一風変わったタイムリープの楽しみ方とは
みえないあたし…透明人間になれる薬を持つ恵子。透明になって周りにイタズラをして楽しむも、ある凡ミスにより笑えない事態に
へんなねえさん…15年間一人っ子のはずだった祐一は、ある日突然「姉」として家に馴染む女性の出現に驚く。しかし「姉」の背中には謎のチャックが…!?
はかせとあたし…一見するとただの椅子。しかし博士が作ったこの椅子は、女性が座ると触手が襲ってくるというとんでもない罠椅子で…
ちいさいあたし…みほの楽しみは体が小さくなる薬で小人気分を味わうこと。もとの大きさに戻る薬を見ていた彼女は、禁断の疑問を思いついてしまう
へんなかあさん…小人の少女たちは、生の女王様を見ようと秘密の覗き場所でスタンバイ。しかしそこで見たものは、自分たちの出生の秘密だった!

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 以上の6つの話を折り返しに、後半戦ですべてが一本に纏まってみせます。全体的に話を通して広がるシュールなエロネタが、実は凝ったSFの伏線だったりするなどと、誰が初見で見破れるのか。個人的には、ヒゲオヤジが“しな”を作って思春期の少年を誘惑しているコマには思わず吹き出してしまいました。これは是非とも頭を空っぽにして読むべきだと思いますが、前半戦で出てくるエロネタがどんな伏線になっているのか、頭をフル回転させて読んでも面白いかもしれません。


「そんじょそこらのナルシストとはワケが違う」と自負しているまあや。たしかに、彼女のタイムリープの楽しみ方はナルシストの極み

祖母の遺品を整理していて、透明人間になれる薬を発見した恵子。消えていく過程のグロさも笑っていられるほど使い慣れています

一人っ子だったはずの祐一にある日突然できた「姉」。混乱する祐一は姉の背中に謎のチャックを見つけ…?

ただのエロネタ触手椅子だと思うかもしれませんが、このページにも仕掛けがあったりするのだから侮れない