文字ではイメージがつかみにくい世相や文化をポスターで知る

更新日:2011/9/21

明治 大正 昭和 日本のポスター

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 〓〓
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:eBookJapan
著者名:三好一 価格:525円

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眺めていると、ぷうんとかび臭いにおいがしてきそうだ。
  
明治から昭和の第2次世界大戦後くらいまでの時期に制作されたポスターのコレクション。私が生まれる前のポスターばかりなのに、眺めていてなんだか懐かしい気がするのは、前世で目にしていたからだろうか。

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著名な画家が描いた三越百貨店の等身大の美人画のポスター(当時は絵看板と呼ばれた)は美術的な価値も高く、三越の看板を掲げることは、それを掲げる小売店などにとっては一種の名誉だったという。戦後間もないと思われる頃に、すでに、白人男性が描かれたビールのポスターや白人の子供のチューインガムのポスターが登場している。CMなどに白人を起用する傾向は、すでにこの頃からあったのかもしれない。
  
戦時中の「海軍志願兵募集」のポスターや、「支那事変国債」や「赤十字デー 報国洫兵博愛」などど書かれたポスターを見ると、教科書の中でしか知らない戦争が生々しく迫ってくる。1939年には臨時国勢調査(商店と物の調査)があり、1940年には国勢調査が行われたことがポスターからわかる。戦争の足音が聞こえてくるようだ。
  
ポスターの中に多いのが美人画。酒やビールのポスターには、特に美人画が多用されている。最近酒屋さんなどで目にするビールのポスターは、同じようなビキニ姿の女性の写真などばかりでおもしろくもないし、目も引かないが、こんな美人画のポスターなら雰囲気があるので、ぜひ飾って欲しい。
  
明治、大正、昭和のポスターを比べてみると、個人的には、大正時代のものにはどことなくかすかなエロティシズムのようなものや、独特の精神的なゆたかさが感じられ、この時代の雰囲気がしのばれて好きだ。銀座線開通のポスター(1927年)に描かれた人々の服装を見ると、まるでパリの地下鉄のホームのよう。名士やお金持ちたちが着飾って地下鉄の開通を祝ったのかも知れない。
  
本を読んでもよくわからないことを、1枚の絵や写真が教えてくれることは少なくない。アートとして眺めるもよし、資料として見るもよし。欲を言えば、ポスターが制作された正確な時期やその背景などがもっと詳しくわかればなおいい。コレクターの皆さんの今後の研究に期待したい。

ビキニの女性のポスターよりずっと上品で、消費者の購買欲をそそりそうなキリンビールの美人画ポスター

東洋唯一の地下鉄の開通は、当時はどれほど大きなニュースだったのだろうか。着飾って開通を祝う人たちの様子が楽しく描かれている

「海軍志願兵募集」のポスター。2度とこんなポスターが制作される日が来ませんように

谷崎潤一郎訳の「源氏物語」発売記念ポスターの原画 (C)三好 一