努力、根性、勝利、ライバル! 少年マンガの王道を見事にとりいれた女子の青春スポーツ小説

小説・エッセイ

更新日:2012/3/2

武士道シックスティーン

ハード : iPhone/iPad 発売元 : Bungeishunju Ltd.
ジャンル: 購入元:AppStore
著者名: 価格:450円

※最新の価格はストアでご確認ください。

引く手あまたの才能をもった主人公が、宿命のライバルを追って高校へ入学し、雪辱を果たすためライバルに近づくも、向こうは自分なんかを覚えていなくって…。そんな設定のマンガ、『ジャ○プ』とか『サン▲ー』とかで読んだこと、ありませんか?

この『武士道シックスティーン』は、その王道青春ストーリーを女子同士で描いた小説です。

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高校生の少女二人の剣道青春物語…知ってはいたのですが、「えー女の子同士かー、あんまりそそられないなー」とか思っていた自分をはっ倒したい。もっと早く読むべきだった! 悔しい! と地団駄ふみながら、電子化されていない続編もさっそく入手した次第。

全国で名を馳せる剣道強者で武道オタク、自分にも他人にも厳しすぎる磯山香織。わけあって日本舞踊をあきらめ、のんびり自分なりに剣道に打ち込む西荻早苗。

物語は、市民大会で磯山が早苗に完膚なきまでに敗退するところから始まるのですが、努力と才能のエリートが意固地な拘りをもたない天然の才能にやられてしまう、という図式がベタなのだけど最高で。また、厳しく一本気の頑固者と、のんびりやでぼけっとした違う種の頑固者、ふたりの近づいたりけんかしたりのライバル関係がツボすぎてきゅんきゅんしていました。

そして『バッテリー』の巧同様、迷いを知らずにとにかく突き進んできた磯山が壁にぶつかり生まれてはじめての「迷い」から再生するさまがもう、かわいくてしょうがない上に、泣ける! つんと澄まして自分一人で立っているつもりのひねくれものが、ひざを折って泣く、っていうのはドキドキしますね。

私、Sなのかしらん。Mかと思ってたけど。なんて思いながら、最後まで一気読みでした。

こういうの読むと、部活やってりゃよかった! と思うんですよねー。団体行動も運動も苦手な超文化系のくせに。仮入部の1週間でテニス部やめたくせに。そんな私に追体験させてくれるなんて、やっぱり小説って偉大だわと改めて感じ入った作品でした。

とりあえず女子剣道大会を、調べて観にいかねば。

漢字とひらがなのフォントを変えたり、字送り・行間の設定もできたり、もちろん背景や文字組も変えられて、個人的には読みやすくてうれしかったポイントです

最初が磯山、それから早苗と交互に視点が変わるのですが、章タイトルをみるだけでも二人の個性の違い(かみあわなさ)がわかって楽しいです