裁判傍聴モノの第2弾、自分が当事者にならないウチに笑っておくべし!

小説・エッセイ

更新日:2012/3/2

裁判長! これで執行猶予は甘くないすか

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:eBookJapan
著者名:北尾トロ 価格:420円

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僕の愛読書「裏モノJAPAN」の人気連載にして、ドラマ化・映画化され、一部大人気を博した「裁判長! ここは懲役4年でどうすか」の続編にあたる作品。前作同様、大事件の類はほぼなし。細かい事件ながらも人情と味わいにあふれた数々の公判が、ユーモアと思い入れたっぷりにルポされている。

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とにかく、事件の選び方が非常にツボ。 裁判開始からずっと泣き落としに終始する角刈りのオヤジとか、自分の罪を全て某宗教団体の催眠術のせい、と言い張っちゃった人とか、とにかく大迫力で公判中にコーラを要求する証人とか。人間ってホントおもしろいなぁ、と改めて感じる。

中にはかなり残酷な事件もあるのだけど、おおよそのエピソードはニヤニヤしながら読めちゃう良い意味でユルくて間抜けなものばかり。作者本人が法廷で書いている、というイラストにも妙な脱力感があり、コレがトホホ感に拍車を掛ける。裁判所の中で起こっていることとはとても思えない(^^;)。

しかし、ユルいからこその怖さも。

今は「バッカだなぁ、コイツ」的な感じで読み進める事が出来るのだが、もしかしたらいつか自分が「被告」としてこの作品に登場してしまうかもしれない。そうなった時に、果たして笑っていられるのか? と問われると、さすがにちょっと。可能性あるし…。

作者の人間観察のレベルは格段に上がっていると思う。

前作のタイトルでは「ここは懲役4年でどうすか」、と裁判長に意見しているのに対し、今回は「これで執行猶予は甘くないすか」と、裁判長に異を唱えるタイトルに変化。「裁判傍聴」という特殊な題材を、ここまで笑える作品に転化出来る才能には、迷わず拍手を贈らせていただきます。

中盤、「傍聴芸人」こと、大川興業の阿蘇山大噴火さんとの対談は読み応えたっぷり。二人の傍聴エキスパートが語る裁判は実に興味深く、思わず東京地裁に行ってみよう、と思ってしまったくらい。裁判所は朝が早いから、きっと無理だと思うけど(^^;)。

iPad横位置、2ページ見開き画面、作者本人作画によるイラストに実に味がある

iPad縦位置での表示、サブタイトルのセンスにも注目!

あの清水健太郎氏も登場! にもかかわらず、イラストが「想像図」なのが笑える

文庫特別対談第1弾は、大川興業・阿蘇山大噴火氏が登場

巻末での対談は傍聴マニア集団「霞ヶ関会」の重鎮・ダンディ氏の鋭い語り、惜しい人を… (C)Toro Kitao 2009