休刊しつづけることには理由がある。その原因を分析してみよう
更新日:2011/9/6
まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―
ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android | 発売元 : イーブックイニシアティブジャパン |
ジャンル:趣味・実用・カルチャー | 購入元:eBookJapan |
著者名:中野晴行 | 価格:540円 |
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銀行勤務後、編集プロダクション設立など漫画業界に詳しいノンフィクションライター中野晴行の実用書。この本が説くキーワードは「マーケティング」と「構造変化」である。
著者は銀行員の経験から、まずマーケティングの視点で漫画業界の将来を考察する。業界において、マーケティングや産業分析がおざなりな実状。出版社の「編集者の勘」という持論。出版社の経営が苦しい時、ある日突然現れ、売り上げを回復させる「神風」と呼ばれるタイトルなど、不安定な要素が業界で慣例化していることを危惧している。
マーケティングとはモウケ(儲け)ティングである。悪い場所がわからなければ、経営を良くすることはできない。経営で悪い場所を見つけるためには、まず正確なデータが必要。儲けをどこから生み出すのか、そのビジネスモデルを早急に見つけなければならないと著者は説く。では業界に正確なデータがあるのか? それがまず問題点だと著者は記している。
次に構造変化である。変化はすでにビジネスモデルから人材、販路にまで及んでいる。マンガ家はグローバルでも、市場はガラパゴスとして、日本のマンガ市場は特異な発展を遂げたガラパゴスであり、世界にマンガ市場を浸透させていくにはマイナス要因になりかねないという。まず出版社は世界各地にマンガ文化、市場を広げることが必要だと説く。著者は、マンガ業界が産業構造にこだわり変化できず、時代の波に遅れることを恐れているのだ。
コンテンツ業界に身を置く私としては、正直耳が痛かった箇所もあった。だが、一方でマンガ業界に新しい種を蒔こうとしている人間がいることも知っている。やはり頑張っている人間もいるのである。この本はマンガ業界を俯瞰的な視点で見直す、良い機会を与えてくれたと思っている。
著者説明
目次
第一章
「神風」の例に挙げられた「クレヨンしんちゃん」
コンテンツビジネスの成功例に挙げられた「エヴァンゲリオン」
コミックの販売金額の推移 (C)Haruyuki Nakano