ユダヤ・ロビーとは何か? タブー視された団体の本質に迫る冷静な分析

公開日:2014/9/17

アメリカはなぜイスラエルを偏愛するのか ― 超大国に力を振るうユダヤ・ロビー

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : ダイヤモンド社
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:佐藤唯行 価格:1,382円

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 BBCの報道によれば、イスラエル軍によるガザ地区への攻撃は5,226回起こり、2,104人の人々が殺害され、国連はそのうち69%を民間人と考えている。一方、イスラエルで殺された民間人はたった7人、殺された兵士は66人だ。数の問題ではないなどと言いたがる人がいることはわかっているが、桁が違いすぎる。なぜこのような残虐なことがあっさり行われるのだろうか。そもそもこんなことになる前に、国連の安全保障理事会はなぜ機能しなかったのか。なぜアメリカはイスラエルの後ろ盾を買って出るのか―—。アメリカに移住したユダヤ人が多いから? ユダヤ人=富裕層だから? ユダヤの陰謀説は真実なのか?

 本書は、アメリカ政府の動きに関与してきたユダヤ・ロビーの実態を膨大な文献から分析。“影で国際社会を牛耳る”的「ユダヤ陰謀論」ではなく、しかし、歴史の被害者でもまったくない、したたかな圧力団体の実態に迫る。1930年代、40年代には政治的にはほとんど無力だった彼らは、どのようにして世界一の国家を動かすまでになったのか。読んでいると、そこまでやるのか…という驚きの連続だ。熱心に政治活動するあまり子どもをネグレクトするミセス、寄付金の額によりパーティーのテーブルまで決め、同胞すらけしかけあう寄付金集め、イスラエルへの批判を口にした議員の追い落とし(しかもユダヤ系の議員が至極まっとうな批判を行った場合でさえも)など、あの手この手の選挙運動・ロビー活動が描写されるが、それらは隠されてすらいないのだ。むしろ積極的に威嚇的に誇張されることすらあるという。「我々に逆らったらどうなるかわかっていますね?」と。

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 書籍版の発表が2006年、文庫版の発表が2009年で、電子書籍の底本は書籍版であり、オバマ政権発足後の事件が記載されていないところが残念だが、ショービズで財を成したユダヤ人たちが、まず民主党の政治家たちと親交を深めたのち、共和党にどのように食い込んでいったのか、キリスト教系右派となぜ共闘できるのか、ユダヤ系リベラルはどのようなことになっているのか、など、今後の国際ニュースを読み解く大きなヒントになる1冊。これほどの過剰さは正直受け容れ難いが、投票率の高さや次世代以降を見据えた戦略の立て方など、ある面では見習うべきところがあるかもしれない。

 


投票率の高さにより人口で劣っている状況を覆すことも可能だが、そのためには「資金力」と同じく組織力も重要だ

同じユダヤ系の友人たちを競わせてでも多額の寄付をさせる。こうして集められた資金は大量のTVコマーシャルなどの選挙資金に費やされる

なかにはユダヤ系団体に積極的に自分を売り込んでいく政治家もいる。こうして米議会とユダヤ・ロビーとの結びつきはますます強化される